スウィート・チャリティ

AppleのCMの曲にミュージカル『Sweet Charity』の曲が使用されている件について

2019年4月13日

 

2019年4月から放送されているAppleの新CM。

なんとなくテレビをつけていたら突然耳なじみのあるミュージカルソングが流れてきたので「お!」と思ってテレビの画面を見たらなんとAppleではないか!

先に答えを言うと、Sweet Charity(スウィート・チャリティー)というミュージカルの作中で流れる「Rich Man's Frug」という曲。

 

 

”Frug”(フルーグ)は脚を動かさないで腰と腕を激しく動かすダンススタイルのこと。アンサンブルによるセリフなしのダンスナンバーです。

このシーン、めちゃくちゃかっこいいんですよね!このダンスシーンを観るためにSweet Charityのチケット買った人もいると思うくらい。独創的で前衛的。

ミュージカルって活き活きとした表情で演目が圧倒的に多いけど、このシーンのダンサーは全員最初から最後まで真顔。

 

しかしなぜAppleの、しかもセキュリティーのCMに使用されたかは正直かなり謎です。この抜かりないキレッキレのダンスのようにセキュリティも抜かりなくいこうぜ!ということなのだろうか。

 

 

ちなみに『Sweet Charity』の曲が使用されている有名なCMは他にもあって、たぶんこっちなら「あ!聞いたことある!」ってなる人多いはず。2013年のHONDAのステップワゴンのCMに使用された「♪Big Spender」というナンバーです。

”Spender”は時間やお金を使う人という意味で、「(ホステスの私に)たっぷりお金使ってくれるそこのお兄さん♡」という曲。

 

けだるげな艶っぽい曲。HONDAのCMも車にスポットライトがあたるセクシーな演出でした。

 

 ミュージカル『Sweet Charity』の魅力

1966年にブロードウェイで初演されたミュージカルで、1969年のミュージカルコメディとして映画化もされてます。

なんいっても有名なのは天才監督兼天才振付師のボブ・フォッシーの振り付け作品であるということ。ミュージカル『シカゴ』や『ピピン』も彼の作品です。ミュージカル界は天才○○がやたら多いけどこの人は本物の天才だと思う。

 

『Sweet Charity』自体は天真爛漫で男運のない主人公が恋に仕事に奮闘するラブコメっぽいTHE・ミュージカルって感じの作品です。一見するとキラキラ系ハッピーミュージカル。

でも、ちょいちょい「なんだこれ?」っていう奇抜なシーンが挟まれる。そこがなんとも言えない魅力なんです。

 

 

でも都会の底辺で生きているホステスたちが”まとも”で普通の生活に憧れて

「こんなお家に住みたいわ」

「幸せな家庭をつくってPTAなんかに参加しちゃったりして」

と願うものの、結局先の見えない今の薄汚れた仕事と人生からは逃れられない。ただの夢なの。という「♪Baby、Dream a dream

のん気で明るいテンポの曲なんだけど、本当はいまにも壊れそうな虚勢であることがうっすらと透けて見えるような切ないナンバー。

 

極めつけは「♪Rhythm of Life」というシーン。

主人公のチャリティーと彼氏がデートで教会に行くシーンですが、リズムオブライフ教会という”ダディ”教祖率いるめちゃくちゃ胡散臭いヒッピー集団の怪しい集会だったとさ、というくだりです。

作品中このシーンがなくても物語として全く問題なく成立するんだけど、『Sweet Charity』という作品は成立しない。それほど印象的なシーンです。

 

 

『Sweet Charity』の公演が宣伝されていた時、そのPR内容は「恋も仕事も頑張る天真爛漫な女の子」のような、いかにもありきたりな作品に見えてしまうようなものでした。

しかし『Sweet Charity』の真骨頂は「Rich Man's Frug」「Rhythm of life」といった日常に潜む奇妙でサイケな世界観だと思うのです。この独特の酸味がこの作品をただの恋愛コメディたらしめない魅力。

 

 日本での上演の歴史

2016年公演のパンフレット

 

1966年にブロードウェイで上演されてから日本では、1972年に真帆志ぶきさん主演で初演。以降、1983年、1984年、1988年、1992年、2006年、2016年と合計7回上演。

自分は2016年のKARAの知英(ジヨン)さん主演のVerしか観たことがないですが、この「Rich Man's Frug」で度肝を抜かれたことをよく記憶してます。

 

ジヨンさんは22歳とかなり若くミュージカル初挑戦ということで、ちょっとあぶなっかしい所が多々あったものの、華があって天真爛漫なチャリティーらしい演技でした。

 

 

2016年公演で中央のポニーテールのダンサーを演じたのは伯鞘麗名(はさやれな)さん。素晴らしすぎるダンスでした。

 

「Rich Man's Frug」のダンサーさん集合写真。

 

 次の再演時期は?

1972年日本初演から2016年まで7回も上演されてますが、ここ数回はなんとなく10年に1回ペースなので次の上演はたぶん2026年あたりかなと思う。

正直、そこまで人気公演というわけでもないのでリメイク版の映画が上映されて話題になったりでもしない限りは、かなり気長に待つことになる気がする。

 

ボブ・フォッシー生誕100年の2027年に再演されるのでは、と密かに予想してます。

 

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