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【初日公演】2021『マリーアントワネット』全ダブルキャストの感想まとめ

 

東京公演は渋谷ヒカリエの東急シアターオーブ

 

2021年1月『マリー・アントワネット』のダブルキャストの初日公演を観劇してきました。2018年からの3年ぶりの再演となります。

公演やあらすじについてのざっくりした説明はコチラの記事でまとめています。

 

ミュージカル『マリー・アントワネット』とは

タイトルの通り18世紀後半のフランス王妃マリー・アントワネットの激動の人生を描いた作品です。そして、日本発の東宝オリジナルミュージカルでもあります。

登場人物は基本的に実在の人物ですが、メインキャストのマルグリット・アルノーという女性だけは唯一オリジナルキャラクターです。ネタバレになるので彼女の正体については書きませんが、アントワネットに負けず劣らずの存在感を発揮します。観る人によってはマルグリットが主役では?と感じるほど。

本作品の略称である「MA」とはマリー・アントワネットとマルグリット・アルノーの二人のイニシャルを指しています。つまり、同じ時代に生きながらも正反対の立場にある二人の女性の人生を描いた作品ということです。

 

ダブルキャストの感想

 

本公演は7人がダブルキャストです。最近の大型ミュージカルの中ではかなり多いほうかな?

本記事はダブルキャストの初日公演の感想として、特に印象に残ったポイントや新キャストの第一印象をさらっと書いていきますね。特定のキャストに焦点を当てた感想はまた別記事で書こうかなと思っています。

 

マリー・アントワネット

花總まりさんと笹本玲奈さんのダブルキャスト。

まず花總まりさんについて。本当に本当に相変わらず素晴らし過ぎました。彼女のためにあるような役だと断言できます。

初日公演では登場シーンで割れんばかりの拍手が起こりました。主役の登場での拍手はミュージカルあるあるなので拍手自体は珍しくありませんが、この時の拍手は少し毛色が違いましたね。

主役が登場したから、ではなく、あまりにも華やかで美しい存在が舞台上に現れたせいで自然と手が動いてしまった、という咄嗟の出来事でした。

コロナ禍での公演決行を祝っての拍手、という意味でも捉えられるかなとも思いますが筆者はそうは考えませんね。あの拍手は度を越えた”何かとんでもない存在”を目の当たりにした心からの賛美みたいなものです。

 

そして、花總さんマリーはやはりお芝居がいいですよね。真骨頂はルイ16世処刑後の白髪になった以降です。間違いない!このシーンの変貌ぶりを見ると女優って怖いって心の底から思います。

同じ人が演じているのに「華奢」から「ガリガリ」へと見え方が変わってしまうし、卵型の綺麗な輪郭ですらハリのないたるんだ頬に見えるようになる。なんでそうなるんだろう?ただのメイクや衣装の違いとは到底思えない。本当に大女優ですよね・・・

 

続いて笹本玲奈さんについて。

正直筆者は花總さんマリーのほうが好みなのですが、”マリー・アントワネットっぽさ”という意味でいえば笹本さんのほうがしっくりきます。

花總さんマリーはちょっと威厳がありすぎるというか、多少奔放なところがあってもこの王妃なら従っちゃうかもな、と思わせるようなある種の強制力みたいなオーラがあるんですよね。私が王妃であるのは神が命じたから、というマリーのセリフに妙に説得力がある。

 

一方で笹本さんマリーはちょっと普通っぽいんですよね。ここがいい!自分がもし当時の飢えたパリ市民だったら花總マリーより笹本マリーのほうがたぶん圧倒的に頭に来ますね!笑

「フランス全市民の悪意の対象となってしまった無知で頭からっぽの王妃」というイメージが物凄くしっくりくる。(当たり前ですけどあくまで役のお話で役者さん本人の話じゃないですよ)

 

当時のパリの女性たちは「私たちと同じただの女なのに、王家に生まれたというだけでどうしてこうも違うの」という憎しみと羨望をマリーに向けていたはずです。

あの女が王妃であるのは神の命令でもなんでもない!ただのラッキーパンチで贅沢できているだけじゃないか!と、市民たちが革命へと奮い立たせられる気持ちがよくわかる。花總さんのマリーだったらちょっと尻込みしちゃいそう。

 

2018年公演もそうだったのですが、筆者は花總さんの回では王家側に同情しながら観てしまい、逆に笹本さんの回では市民側に肩入れしてしまいます。

ちなみに作中に「私の罪はプライドと無知」というマリーのセリフがありますが、プライドの部分を色濃く表現しているのが花總さんのマリー、一方で無知の側面を体現したのが笹本さんのマリーだと思いますね。

 

マルグリット・アルノー

 

ソニンさんと昆夏美さんのダブルキャストです。ここまでレベルの高いダブルキャストはここ数年の東宝ミュージカルで中々お目にかかれないのでは?と思います。それほどの完成度です。

どちらも素晴らしいキャストという大前提での感想ですが、筆者個人としては2018年公演から変わらず昆さんのマルグリットが好みです。

「どうして彼女。なぜ私じゃない」というマルグリットのセリフがなんとも悲しく響くんですよね。というのも、昆さんマルグリットは王妃への憎しみだけでなく、王妃への強い憧れみたいなものを感じます。

私だって本当は王妃のようにオシャレして恋愛したい、毎日可愛いモノに囲まれて暮らしたい。そんな健気な秘めた想いがチラつくところが好き。

ちなみにソニンさんのマルグリットなら「あんな女になるくらいなら死んだほうがマシ」とでも答えそうな感じがします。怖い!

 

フェルセン伯爵

田代万里生さんと甲斐翔真さん。甲斐さんは2021年公演の新キャストの一人です。

まず田代さんのフェルセンですが、もう完成しきってます!歌唱・セリフの聴き取りやすさ・佇まい、全てにおいて一瞬の隙もなく洗練されています。

 

ミュージカルとして楽しむなら正直なところ圧倒的に田代さんかなー、と思ってしまいましたが、筆者は甲斐フェルセンが結構お気に入りです。”マリー・アントワネットもの”として楽しむなら甲斐さんのほうが好きかも。

この好みの差は個々人のフェルセン像に大きく影響されるポイントなのかなと思います。筆者が想像するフェルセンは、アントワネットとの身分の差に翻弄され苦悩し続けた人物なのです。

そのせいか、「こんな高貴で麗しい女性が自分のような存在を選んでくれたなんて」という甲斐フェルセンの健気な戸惑いがとにかくしっくり来ます。精神的に常に一段下にいるというか。

だからこそ、「遠い稲妻」でフェルセンがマリーに忠告という名の説教をするシーンがグッとくるんですよ!あぁ、本当に勇気を振り絞って言葉に出した忠告だったんだなって感じるんです。

一方で田代フェルセンは精神的にはマリーとかなり対等な雰囲気がありますよね。そっちのほうが好き、という感想もよく分かりますけどね。

 

作中では語られませんが史実のフェルセンはアントワネット死後に徐々に冷たい権力者になっていったそうです。甲斐フェルセンはこの狂気じみた変貌が容易に想像がつくところもお気に入りポイントの一つです。

フェルセンのその後の暗い人生を暗示する怪しい香りみたいなものを舞台上にそっと残して終わるところにゾクゾクします。田代さんのフェルセンは死ぬまでずっと市民にも王家にも好かれそうな感じがしちゃうんですよね。

 

繰り返しになりますがミュージカルとして満足度は圧倒的に田代さんのほうが高いです。しかし一方で甲斐さんのフェルセン像が筆者の嗜好とぴったりハマってしまったせいで、こんな感じの感想になっています。

 

オルレアン公

上原理生さんと小野田龍之介さんのダブルキャストです。2018年公演は吉原光夫さんのシングルキャストでした。

このダブルキャストめちゃくちゃ好きです。2021年ダブルキャスト賞なるものがあるならこの二人に贈呈したい。

上原さんのオルレアンはパワータイプに見せかけた知略タイプで、まさに王宮に巣食う蛇。小野田さんはその逆。知略派の皮被ったゴリッゴリの戦闘狂で、血渋き舞う革命そのものを楽しんでいるような感じでしょうか。

 

しかしオルレアンって本当にオシャレな役どころですよね。市民サイドに味方する王家の人間という立ち位置だけでズルいのに、そんな洒落た役を上原さん・小野田さんというミュージカル界ではかなりガッチリズッシリした二人がやっているという事実がまず大好きですね(笑

オルレアン公という悪役をもっと美味しく、面白く、魅力的にしてやろう!という暑苦しい想いを感じます。役作りに苦労しながらも心から楽しんで演じている雰囲気が伝わってきますよね。

 

ところでちょっと余談なのですが、一幕の貧民街のシーンで警察が来た瞬間に王族のくせにあまりにも逃げ足の速い俊敏なオルレアンで毎回ちょっと心の中で笑ってしまうの筆者だけでしょうか。普段あんなに優雅にカッコつけてるのに。

 

エベール

上山竜治さんと川口竜也さんのダブルキャストです。2018年公演はサカケンさんこと坂元健児さんのシングルキャストでした。

このダブルキャストもなかなか面白かったです。二人とも雰囲気が全く違います。サカケンさんの系譜を色濃く継いでいるのが上山さん、独自のエベール像を作り上げたのが川口さん、という印象です。

 

しかし一方で、ちょっと辛口な感想になってしまって申し訳ないのですが、サカケンさんのエベールの凄さを改めて実感してしまったかな・・・

サカケンさんのエベールって矮小で狡猾、しかし革命への想いは実は誰よりも熱い、みたいな役だったと思うんです。しかし上山さんからは矮小さはほとんど感じられず、一方で川口さんからは革命への熱さはあまり感じず・・・なんだか役としての濃度が薄まってしまったように感じてしまったかな。

もちろん初日公演の感想なのでまだまだ変化していくとは思いますが、率直な第一印象としてはこんな感じです。ファンの方ごめんなさい。

 

まとめ

ヒカリエ2階の大画面で舞台映像が流れています

 

今回は初日の第一印象(特に新キャスト)の感想ですが、千秋楽までさらに進化&変化していくはずです。

 

「初日観たけど結構ちがう感想を持ちました!」

「最初はこのブログとだいたい同じ感想だったけど後半戦で大きく印象が変わった!」

「ぶっちゃけ再演観る気になりません!理由は~」

 

などなどいろんな意見を聞きたいです。教えてやってもいいよ!という方はぜひコメントください。

 

【補足】原作小説

原作は遠藤周作さんの『王妃マリー・アントワネット』という小説です。上下巻で結構ボリューミーです。これを読めば作品理解度が高まること間違いなし。ちなみに筆者は読んでません。

 

 

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