1789 -バスティーユの恋人たち- マリー・アントワネット 歴史 ひかりふる路

フランス革命ミュージカルの主役になるべきギロチンで処刑された4人の女性革命家

2019年7月15日

 

バスティーユ牢獄襲撃

 

日本で人気のあるミュージカル作品といえば、『エリザベート』や『モーツァルト!』に代表されるようなウィーン・ミュージカル。

主に劇団四季で公演される『ライオンキング』や『リトル・マーメイド』などのディズニー・ミュージカル。

これら超有名作に追い越せ追い抜けで台頭してきたジャンル、それがフランス革命ミュージカル!

いまや毎夜、日本のどこかの劇場で革命が起こっていると言っても過言ではないほど、フランス革命を扱った作品の人気が高まっています。

そのほとんどは男性中心に革命が主導されているように描かれますが、実はフランス革命ほど女性が活躍した革命はないのです!

今後もフランス革命ミュージカルの新作は世にドシドシ発表されていくと思います。

そこで今回はこの人たちを主人公にした作品つくってくれ~!!という4名を紹介します。



 

1.リュシル・デュプレシ

リュシル=デュプレシ(1770-1794)

 

"優しさのリュシル"の異名をもつ彼女。革命家として有名なカミーユ・デムーランの妻です。

ミュージカル作品では『1789 -バスティーユの恋人たち-』に登場するので知名度は比較的高め。

中央の二人がデムーランとリュシル。東宝版ではリュシルは則松亜美さんが演じられていました。

 

『1789 -バスティーユの恋人たち-』はバスティーユ牢獄襲撃がクライマックスシーンなので、実際処刑されていった革命家たちが全員生きている状態で終わるんですよね。

当然、デムーランも実際は処刑されてしまうんですが、実は妻であるリュシルも夫と同じくギロチンによって処刑されてしまったんです。24歳の若さでその生涯を終えました。

革命家デムーランの妻であるというだけでなく、リュシル自身もジャーナリストとして活動していたんです。ミュージカルでは夫を支える敬虔な妻としか描かれてないのがもったいないですね。

 

しかしリュシルは断頭台での男より男らしすぎる堂々たる姿がかっこいいんですよね~・・・

断頭台を目の前にして「やっと夫に会いに行けるんだから幸せです、全く怖くありません」と言い放ち、一説にはスキップのような軽い足取りで断頭台に登ったと言われています。

彼女自身は官僚の父のもと超裕福な家庭で育てられた美しいお嬢様だったため求婚者が絶えなかったそうですが、そんな彼女が選んだのは公園で出会ったデムーラン。

家族からの猛反対によって7年越しにやっと婚約し、リュシルの革命家人生が始まります。

 

リュシル、息子オラス、デムーラン

 

病弱ぎみなお金持ちのお嬢様が行動力溢れすぎる女性ジャーナリストに変貌をとげ、革命家である夫デムーランを長年支えました。そして、仲睦まじい理想的な家族だったことも二人が民衆から支援された理由のひとつだったんですよね。

しかし、二人の子供であるオラスの名づけ親こそ、デムーランとリュシルを断頭台へ送ることになるかつての親友ロベスピエールなんですがね・・・

なんともドラマチックな人生を歩んだ女性だと思います。そしてミュージカル映え間違いなしである。

彼女を主役にしたミュージカルがつくられるなら、強さと、とくに優しさの芝居が抜群の和音美桜さんにぜひ演じてほしいです。

 

2.シャルロット・コルデー

シャルロット・コルデー(1768-1793)

 

"暗殺の天使"の異名をもつ彼女。革命の指導者であり恐怖政治を推進したジャン=ポール・マラーを暗殺した人物。

あの有名な絵画「マラーの死」のマラーのことです。

 

ダビットによる『マラーの死』

 

この絵を見て、「あ、どっかで見たことある」とピンと来た人も多いかと思います。実はこの刺し傷はシャルロットによってつけられたものだったんですよね。

 

ポール・ボードリーによる『マラーの死』

 

別の画家によって別の角度から描かれた絵画もあります。これを見るとよくわかりますが、あの有名な絵画「マラーの死」のすぐ傍らに実は殺人犯であるシャルロットが佇んでいるんです。

ちなみに、マラーが入浴中で隙があったタイミングを見計らって殺害されたと思われがちですが違います。

マラーは重い皮膚病を患っていたので、薬草を浸した浴槽に一日中入っていました。なので、その状態でも執筆できるようにこうしてバスタブに机をセットしているわけですね。

没落貴族の田舎育ちであったシャルロットはマラーを殺害するためだけに単身パリに乗り込み、マラー殺害の数時間前に購入したナイフで一突き。

田舎娘の犯行にしてはあまりにも華麗な殺害だったため、本当はこの子は犯人じゃないのでは?と疑われてしょうがなかったとか。

そして彼女はマラー殺害後、現場から逃げようとしなかったため呆気なく拘束。そしてあっけなく処刑が決まります。

 

処刑に向かうシャルロット

 

あの革命家マラーをナイフ一突きで殺害した人物を一目見ようと彼女の処刑の日に多くのパリの民衆が集まりましたが、そこで民衆が見たのは屈強な大男でも軍人でもなかった。

なんと25歳の美しすぎるうら若き乙女だったのだ。シャルロットの華麗な姿を見て、何人もの民衆たちが彼女に恋に落ちたと言われています。

彼女の首がギロチンによって落とされたあと、調子に乗った処刑人が彼女の頭を持ち上げて頬を何度も叩きました。

処刑人の姿を見て民衆は「おい、やりすぎだ」と騒ぎ立てましたが、頬を叩かれた彼女の顔がみるみる真っ赤になり、怒りの表情をあらわにしたという逸話が残っています。

もちろん太陽の加減かなにかでそう見えただけ、ということでしょうが、このような伝説になるほどセンセーショナルな処刑だったということは間違いなし。

うら若き天使のような美貌の乙女による革命家の暗殺事件。まるで創作のような出来事が連発したフランス革命の中でもトップを争う物語性なのではないでしょうか。

彼女を主役にしたミュージカルをつくるなら、可憐さ・美しさ・強さを兼ね備えた愛希れいかさんにぜひ演じてほしいです。

 

ちなみに宝塚公演の『ひかりふる路』というロベスピエールが主役の作品にマリー・アンヌという女性が登場しますが、彼女のモデルはシャルロット・コルデーではないか?と言われています。

シャルロットのフルネームはマリー=アンヌ・シャルロット・コルデー・ダルモンだからね。



 

3.ロラン夫人

ロラン夫人(1754-1793)

 

"ジロンド派の女王"の異名を持つ彼女。

フランス革命を指導したジロンド派の黒幕といわれています。ジロンド派とは簡単に説明すると、ロベスピエール、デムーランらのジャコバン派と対立していた一派ですね。

地方のリヨンで夫のロランと結婚し、金銭的にも精神的にも充実した生活を送っていた彼女。しかし、もともと知的で活動的であった彼女は1789年に革命が勃発してから、いてもたってもいられなくなり、夫婦でパリへ移住しました。

そしてサロンを開き、のちのジロンド派のメンバーたちと親睦を深めていき、最終的には夫を自由に操りジロンド派のボスになったのです。

彼女とは正反対の立ち位置にいた本物の女王であるマリー・アントワネットよりも絶大な政治的影響力とカリスマ性を持っていたと言われています。

しかもこの二人、年齢もほぼ一緒で処刑されたのはわずか1か月差の出来事。まさに同じ時代を生き抜いた二人の女王なのです。

創作キャラクターの平民マルグリッドと王妃アントワネットの数奇な人生を比較して描いたミュージカル『マリー・アントワネット』がありますが、

2人の女王、アントワネットとロラン夫人の物語があっても面白いかと思います。

 

おお自由よ!汝の名において何と多くの罪が犯されたことか!」という処刑台で叫んだ彼女の最期の言葉はあまりにも有名。

彼女を主役にしたミュージカルをつくるなら、ぜひソニンさんに演じてほしいです。平民vs王族の物語の平民サイドには筆者の中ではソニンさんは必須なのです!

 

4.テロワーニュ・ド・メリクール

テロワーニュ・ド・メリクール(1762-1817)

 

"自由のアマゾネス"の異名を持つ彼女。

貴族相手の高級娼婦出身という経歴を持ちながら、乗馬服に身を包み男装して革命家として活動しました。

男装の麗人というと『ベルサイユのばら』のオスカルをイメージしますが、実はオスカルと同じフランス革命期に実在の男装の麗人がいたわけですね。

オスカルは生まれてすぐに男として育てられましたが、テロワーニュの場合、女の武器を最大限使う娼婦という職業から革命を推進する男装の革命家になったというのが面白いところ。

貧しい家の出身であった彼女でしたがパリで革命の熱い風に感銘を受けて、男装して革命家たちのサロンに出入りしたり、裁判の傍聴に通ったりして革命家仲間を増やしていきました。

 

30歳当時の男装姿のテロワーニュ

 

長年革命家として活動した彼女ですが、ある日国会の前で女性たちと揉みあいになり、馬から引きづり降ろされ暴行を受けてしまいます。

このことから彼女の精神が次第に狂ってしまい、晩年は精神病院を転々とする悲しい最期でした。

前述した3名とは違い、彼女だけはギロチンで処刑されずに済んだものの、やはり革命期に活躍した女性はみな残酷な最期を遂げてしまうんですね・・・

 

亡くなる直前の54歳のテロワーニュ

 

2019年11月にミュージカル化が決定している坂元眞一先生の漫画『イノサン』にも登場しています。

 

 

強く美しい女性で溢れた時代

フランス革命期の女性といえば、やはりマリー・アントワネットにスポットライトが当たりがちです。

が、今回あげた4人以外にも、そりゃもうたーーーくさん、魅力的で狡猾な女たちが活躍しまくった時代なんですよね。

娼婦から国王の愛人にまでのし上がったデュ・バリー夫人、蝋人形作家のマダム・タッソー、19歳のときに70歳の男性と結婚したフランス社交界の華・モンテッソン侯爵夫人。

などなどなど、挙げればきりがないほど。

フランス革命期ほど女性たちがアグレッシブで活動的な時代はないと思います。そりゃあ、ミュージカル化もされまくるよね・・・

彼女たちはもちろん既存のフランス革命ミュージカル作品にちょこちょこと登場はするものの、正直脇役ぎみ。

ぜひぜひ、彼女たちにスポットライトを当てた作品を待ってます!!

 

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