フラッシュダンス 観劇レポ

【感想】ミュージカル『フラッシュダンス』愛希れいかのダンスの魅力とは

 

ダンスシーンてんこ盛り!

 

愛希れいかさん退団後の単独初主演作『フラッシュダンス』を観てきました。感想です。

 

■原作:
トム・へドリー&ジョー・エスターハス作
パラマウント・ピクチャーズ映画『FLASHDANCE』

■演出:岸谷五朗

■出演:
愛希れいか 廣瀬友祐
桜井玲香 福田悠太(ふぉ~ゆ~)
植原卓也  Dream Shizuka
石田ニコル なだぎ武
松田凌  大村俊介(SHUN)
秋園美緒 春風ひとみ 他

【東京公演】
■公演日程:2020年9月12日~ 9月26日
■会場:日本青年館ホール@外苑前

 

ざっくりあらすじ

 舞台は1983年、ペンシルベニア州ピッツバーグ。主人公アレックス(愛希れいか)は昼は製鉄所で働く一方、夜はバーで踊りながらプロのダンサーになることを夢みていた。

親友の強い応援を受け、ダンスの名門校シプリーアカデミーのオーディションを受けることを決意するアレックス。しかし、ほぼ独学で自己流のダンスを身に着けた彼女は熟練のライバルたちに気圧され自信を無くしてしまう。

一方で、ある日製鉄所に訪れた御曹司ニック(廣瀬友祐)に一目惚れされてしまい、猛烈なアタックを受けるうちに次第に惹かれあう二人。

彼女の恋愛とプロダンサーへの夢の行方は…

 

主人公アレックスを中心に展開していく青春群像劇です。彼女を取り巻く仲間たちはそれぞれに夢を抱き、厳しい現実に向き合いながらも強く前に進んでいくストーリー。

アレックスの親友グロリア(桜井玲香)が猥褻な違法クラブで踊るようになってしまったりとなかなかハードな展開もありますが、基本的には終始明るくポップでダンサブルな作風です。

 

そんな上手いこと世の中進むかい?と思ってしまう程かなりトントン拍子物語なので、リアリティのある作品が好きな人にはあまりオススメできません。

逆に、ハッピーエンド確約の王道ミュージカルらしい展開が好みの人にはぴったりハマると思います。

 

意外と長い

 

原作は大ヒット映画

 

原作となるのは1983年公開の映画『フラッシュダンス』。作品の舞台も同じく1983年なので、当時の若者とダンス文化を描いた作品です。

今から40年近く前ですが、1983年といえば東京ディズニーランドが開園した年でもあります。ファミコンが発売されたのもこの頃。今の60代くらいの人たちが青春を過ごした時期ですね。

 

作品を代表する「What a Feeling」は絶対に誰しもが聞いたことのある曲です。ワダッフィ~レン!というサビのフレーズを聴けば「あぁこれね!」とピンとくるはず。

1983年リリースの音楽といえばCulture Clubの「Karma Chameleon」(カマカマカマカマカマカミリ~オ~ンでサビが始まる有名な曲)やEurythmicsの「Sweet Dreams」、David Bowieの「Let's Dance」などなど、ポップスの歴史に残るヒットソングの宝庫。

翌年にはDead Or Aliveが「You Spin Me Round」をリリースしていますし、1980年代洋楽ファンにとってはたまらない時代です。筆者もこの年代の音楽が大好き。

このあたりのポップスってただメロディが良いだけでなく、どこかサイケで怪しげな魅力がある曲が多い年代んですよね。王道ポップスで終わらない奇抜さがある。

 

舞台の感想

ここからは舞台の感想です。まず結論から言うと、ダンスも歌も良かったですがリピートはしないかな。

というのも製作のアミューズさんの色がこれでもかというほど濃厚に出ていることもあり、演出も楽曲アレンジも筆者にはちょっとポップ過ぎました。登場人物の言動がそろいもそろって高校生とか大学生みたいなんですよね。

とはいえ、愛希れいかさんのダンスは本当に素晴らしかった。

 

決定的なネタバレはありませんが、内容に触れているので自己責任でお願いします。

 

これが噂の愛希れいかのダンスの魅力か!

ダンスが魅力的であるという噂はかねがね耳に入っておりましたが、ここまでガッツリ踊っている愛希さんは初めて見ました。そして、本当に良かった。目が離せなくなるような独特な魅力がありました。

作中でアレックスがオーディション書類に書く「ダンスするにあたって最も重要なこと」という質問に対して”情熱”と回答するシーンがあります。愛希さんのダンスもまさにその通り、一挙手一投足にダンスに対する強い情熱を感じざるをえない。

 

愛希さん自体は天真爛漫でおっとりとした女性のように見えます。しかし、そんな朗らかな彼女の中に熾烈な戦いを何年も勝ち抜いてきた舞台人としての牙や野心が垣間見れる瞬間が随所にあるんです。そこが本当にゾクゾクくる。

 

そして、今回の公演はコロナ明け作品というだけでなく、愛希れいかさんの退団後初となる単独主演公演です。

宝塚歌劇でのキャリアだけでなく既に東宝『エリザベート』にて主演を務めるなど、これからも演劇界では引く手あまたの存在であり続けることはほぼ確約かと思います。

とはいえ退団後初主演作ともなれば気合の入れ方が違うはず。少し大げさな表現かもしれませんが、演劇界の未来が変わるこのご時世と同時にご自身のキャリアに大きく影響する公演の座長を務めるというのは並々ならぬプレッシャーがあるのではないでしょうか。

 

そんな背景を抱えつつ踊るラストのオーディションシーンは鬼気迫るものがありました。

「あなたたちは私を見なければいけない」というセリフは、まさに今の愛希さん自身の状況とアレックスの姿がオーバーラップしてしまう。

 

 

ハマり役のオンパレード

主役の愛希さんだけでなくその他のプリンシパルの皆さんも良かったです。役者さんのカラーにあった配役だったと思います。つまり、ハマり役が多かった。

 

アレックスの恋人ニックの廣瀬友祐さんはまさに御曹司というナリと声質ですし、何よりお顔立ちと雰囲気が作品の時代に合ってます。ちょっと昭和感のある男前というか。

 

アレックスの親友3人組のグロリア、キキ、テスのおてんば三姉妹も好きです。

元乃木坂46の桜井玲香さんはミュージカル女優としてますますキャリアを積んでおりますよね。本格ミュージカルに挑戦するアイドルは近年本当に多いですが、その中でも筆者は桜井さんのことは結構好きです。というか応援しています。

彼女のパーソナリティはあまり知りませんが、きっと責任感の強い努力家なのだと思います。セリフや歌唱に安定感がありますし、何より舞台女優さんらしいキリリとしたお顔立ちが魅力的です。

 

ミュージカルオリジナルキャラクターであるキキ役を演じるDream Shizukaさんは初めて拝見しましたが、歌唱とダンスに迫力がある!セクシーでグラマラスな雰囲気のある女優さんです。

セクシー系の舞台女優はあまり多くはないので、バーやショーダンスを題材としたミュージカル作品には今後引っ張りだこになるのでは?

 

テス演じる石田ニコルさんは2019年の『ファクトリーガールズ』以来でしたが、ファクトリーガールズよりもだいぶハマり役だったと思います。紡績工場の作業服よりダンサーのほうが圧倒的に魅力ですよね。

 

本作のヴィラン的立ち位置となるC.C.役の植原卓也さん。もっと植原さんのダンス観たかったよ!!

というのも、今回チケットを取った理由の一つが植原さんのダンス目的だったからです。2019年の『ダンスオブヴァンパイア』のカーテンコールにてキレッキレのダンスを披露されていたのが鮮烈に記憶に残っていたんです。

ダンスを題材とした作品に出演されるのだからガッツリ踊るのだろう、と思っていましたが完全に予習不足でした。出演シーン自体は多いですが、ダンスといえばオープニングにて隅っこでちょっと踊るだけですよね。

ミュージカル界の若手男性俳優の中では相当踊れる役者さんなのに勿体ない…

 

とはいえ役どころはぴったりでした。グロリアに「気持ち悪い」と形容されるようなクネクネとした蛇のような男。前回出演作品『ダンスオブヴァンパイア』のヘルベルトといい、薄気味悪い美形の役が最高にハマる役者さんだと思います。

個人的には『エリザベート』のエルマーのようなまともな役よりも、ヘルベルトやC.C.のような突き抜けた奇人役を極めてほしいです。

あと、とても舞台映えするお顔立ちですよね。ちょっと歌舞伎っぽいというか。筆者は最近ファン化してきてます。

 

そして締めに、春風ひとみさん演じる一癖ありながらも優しい老婦人ハンナも素晴らしかったです。彼女の存在感が無ければ、終始若者がはっちゃけるストーリーになってしまっていたかも。

 

王道ミュージカルファンにオススメ

まとめるとこんな感じ。

こんな人にオススメ

・ダンスシーンとポップスを堪能したい
・煌びやかな女の子たちが好き
・王道ハッピーエンドが好き

ちょっとオススメできないかも

・リアリティある作品が好き
・荘厳で重厚な世界観が好き
・ダンスよりもお芝居を重視したい

 

繰り返しになってしまいますがかなり王道を極めたテイストです。アミューズアミューズしてます。

とはいえ出演者は若手ながらも熟練のキャスト揃いですし、とにかくダンスを見るのが好きだ!という人にはオススメです。

 

筆者は「What a Feeling」より一幕ラストの「Maniac」の疾走感が好き。

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