観劇レポ 石丸幹二 ライムライト

ミュージカル『ライムライト』感想とみどころ │ 石丸幹二主演による待望の再演

2019年4月25日

 

観てきました。石丸幹二さん主演ミュージカル『ライムライト』

 

HARI
観劇レポです!

 

 

ミュージカル『ライムライト』とは?

チャールズ・チャップリン(1889~1977)

 

ライムライト』(Limelight)は、1952年にアメリカで製作された映画。

なんとあの喜劇王チャールズ・チャップリンが監督・脚本・主演を務めた作品。

 

チャップリンってあの靴食べてる髭のチャップリン?じゃあドタバタしたコメディ映画?と最初は自分も思いましたが、ものすごく真面目な作品。そしてなんと今年はチャップリン生誕130周年なのです。

チャップリン作品と言えば『独裁者』だったり『モダン・タイムス』は教科書に載っていることもあってか一般的な知名度も高い。

 

しかしこの『ライムライト』は知名度はそれほど高くないものの、チャップリンファンの中では最高傑作と言わしめるほどの名作。そして、ミュージカル化されているのわけです。

 

世界史の教科書常連のチャップリン

 

ちなみにライムライトとは電球が普及する以前に舞台の照明として使用された照明器具のこと。

それだけでなく、名声を表すこともある。いわば「スポットライトをあびる」みたいな意味ですね。

 

主人公カルヴェロとバレリーナのテリー

 

 

公演情報

日比谷 シアタークリエ

 

公演期間

東京公演:2019年4月9日~2019年4月24日@シアタークリエ

大阪公演:4月27日、28日、29日@梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

福岡公演:5月2日、3日@久留米シティプラザ ザ・グランドホール

愛知公演:5月5日、6日@日本特殊陶業市民会館ビレッジホール

 

 

キャスト

年老いた道化師カルヴェロ:石丸幹二(原作映画ではチャップリンが演じている)

若く美しいバレリーナのテリー:実咲凜音

テリーの初恋のピアニストのネヴィル:矢崎 広

and more...

 

ストーリー

年老いた道化師カルヴェロと若く美しいバレリーナのテリーの物語。

かつてはイギリスNo.1の道化師(現代チックに言うとお笑い芸人)であったカルヴェロはいまや飲んだくれの老人。

 

毎夜ロンドン中で笑いの渦を巻き起こし喝采と脚光を浴びた彼の姿はもうない。今やただのアル中である。誰も彼のことをかつての大スター"カルヴェロ"であることは知る由もない。

知人に金を借りながらアパートでひっそりと暮らす毎日である。そんなカルヴェロがある日アパートに帰ると、なにやらガス臭い。アパートの一室からガスが漏れていることに気づくと、ドアを蹴破り中に入った。

 

ガスまみれの部屋には若い女性がテーブルに突っ伏している。自殺しようとしていたのである。カルヴェロは彼女を部屋から担ぎだし、自分の部屋に連れて行った。

なにがあったのか、どうして死のうとしたのかと彼女に聞いても何も言わない彼女。

 

それどころか、死にたかったのに何故助け出したのかとカルヴェロを責める始末。彼女はテリーいう名のバレリーナであった。そんな彼女を励まそうと、元道化師であるカルヴェロは毎日必死に彼女を笑わせようとおどけてみせる。

だんだんとカルヴェロに心を開いていくテリーはカルヴェロに自分のことを話し出す。

彼女の姉は、テリーのバレリーナとしてのレッスン代を払うために体を売っており、それを知ったテリーはショックを受けて脚が動かなくなり、自殺を図ったのだった。

 

一方カルヴェロは脚の動かないテリーのお世話をしつつ道化師としての仕事を再開するようになったが、年老いた老人の芸などだれも笑わない。それどころか同業である若い芸人たちに馬鹿にされてしまう。

落ち込むカルヴェロを励ますテリー。カルヴェロを励ますうちに、テリーの体に生きる気力が再び宿りだす。気づくとテリーは立って歩いていた。二人は抱き合って喜んだ。

 

そしてテリーはバレリーナとして復帰し、カルヴェロも道化師として復帰しようと精力的に仕事をするようになる。

自分の人生を取り戻してくれたカルヴェロに結婚を申し込むテリー。しかし、カルヴェロはもはや年老いた老人。若く美しい未来のあるテリーには自分なんかふさわしくない、とカルヴェロはテリーのもとを去ってしまう、、、

 

続きは劇場で、、、

ここからはネタバレありなのでこれから観劇する人はご注意を!

 

 

この作品はズバリ、

人生踏んだりけったりうまくいかない。生きる意味なんかよくわからない。という人にオススメ。

理由は後述していきます。

 

ミュージカルではなく「音楽劇」

 

ミュージカル作品として上演しているものの、正式には『音楽劇 ライムライト』

そのため、歌:セリフ=3:7くらいの印象。

原作が映画作品であることもありセリフの部分がかなり多く、まさに"音楽劇"として仕上がっています。

 

音楽劇だけあってか、歌やダンスのシーンはほどほど。ダンスと言ってもキャストが派手に踊り狂うシーンはなく、バレエのシーンがほとんど。

歌もTHE・ミュージカルといった歌唱はなく、心情の吐露のようなしっとりとしたナンバーのみ。

 

急に踊りだしたり歌いだしたりしない作品なので「ミュージカルっぽさが苦手」という人でも違和感なく楽しめる作品という印象です。

 

逆に言えば、歌えや踊れ・群舞だ大コーラスだバク転だ!といった作品を期待していくとガッカリしてしまうかもしれないです。

全編を通して原作の白黒映画の暖かさを彷彿とさせるような、どこか優しい穏やかな作りになっています。

 



 

みどころ

①老いに焦点をあてた作品

ミュージカルは基本的に「誕生」や「成長」といったストーリーであったりテーマ性があることが多いですよね。

ライムライトは他のミュージカル同様、生きるということを大きなテーマとして掲げているものの、誰しもがいつか向き合わなければならない”老い”に焦点をあてた物語です。

 

もちろんテリーは若く美しく、バレリーナとしても人間としてもまさに花満開の女性として存在感を発揮しています。

しかし、筆者としてはテリーはあくまで年老いたカルヴェロの究極の対比の存在として描かれているだけであり、やはりこの作品のテーマは1人の人間が朽ちることであると思う。

 

この作品、ミュージカルとは思えないほど現実的で、心が痛くなるシーンが結構あるんですよね。

一口に老いと言っても、美しく朽ちていく老いではなくて、老いという現象をなかなか受け入れられない人間のリアルな部分を描いています。

 

主人公のカルヴェロは過去の栄光にしがみ付くプライドの高い老人。こんなめんどくさい偏屈な老人が主役のミュージカルなかなかない。

若手芸人にジイサン呼ばわりされたり、居酒屋で滑りたおしたり・・・

決して美しい老い方とは言えないため、まるで消えかけのロウソクのような地味で、もの悲しいお話です。

しかし、そこがこの作品の醍醐味でもあるのかなと思います。

 

 

②キャストの高い"普通の人"力

この作品には国王も王妃もいなければ、革命家も怪人も猫もライオンもいない。登場人物全員が20世紀初頭のロンドンに生きるごく普通の市民たちです。

 

しかし普通の人を演じるのが一番難しいとよく言われています。

おおげさな動作をしたり変わった言い回しをすると何か特別な職業や地位の人か、もしくはただの変人になってしまう。

 

カルヴェロを演じる石丸幹二さんは"普通の人"を演じるのがものすごく上手だといつも思う。

『壁抜け男』という作品でまさに普通の人間、真面目な役人を演じていますが、ライムライトのカルヴェロは大スターの過去を背負ったどこにでもいる普通の老人。

創作物によくでてくる賢者のような老人ではなく、ちょっと偏屈で頭の固い普通の老人。

 

市村正親さんもかつて、平凡なサラリーマン役を演じたドラマのインタビューで「普通の人を演じるのが一番難しいかも」と答えている。

一般的には、特徴的な喋り方をする個性的な役や変人役を見事に演じた役者に注目が集まりがちですよね。

 

奇人変人だらけのミュージカル作品において、ここまで一般の市民の生活を丁寧に描いた作品はなかなかないかと。

 

 

③映画にも出てくる名言の数々

原作映画には数々の名言が飛び出るが、当然ミュージカル『ライムライト』の作中でも登場する。

特に印象に残った2つをご紹介。

 

なぜ生きることに意味が必要だ。人生は欲望でできている。バラはバラになろうと望んでいる。岩は岩になろうとしてる。そこに意味はないのだ。

 

バレリーナとしての生命線である脚が動かなくなり、生きる意味を見出せなくなったと失意のどん底にいるテリーを励ますカルヴェロの言葉です。

生きる意味なんぞ見出さなくてよし。人間はただ生き続けるのだ。というありがたいお言葉。

 

生きる意味を考える時間すらない現代人には耳が痛い言葉ですよね・・・

ライムライトはチャップリンが残した人生の教科書だ、というレビューをみたことがあります。たしかに生きていく上で迷ったり落ち込んだりしたときに見れば何かヒントが見つかるかもしれない。

 

 

観客は個人としてはいい人達だが集団になると頭のない怪物で、どっちを向くかを知らずどの方向にも向けられる。

 

カルヴェロが観客について語るシーンで登場するこの言葉。

作中ではカルヴェロのセリフではあるけれども、まさにチャップリンの長年の想いがそのままセリフになった言葉だと思う。

 

たった1節ですが、喜劇王の異名を持つチャップリンでさえ観客に飲まれそうになる経験を何度もしてきたことが伝わる迫力のある言葉です。

 

それだけでなく、社会風刺の強いシニカルな作品を世に生み出してきたチャップリンのことなので、自立性や個を認めない全体主義へのアンチテーゼという意味もあるのかもしれません。

 

作中のセリフからチャップリンの裏メッセージや人生論を読み取ることもこの作品の楽しみ方のひとつでしょう!

 

まとめ

 

冒頭述べたように、人生に迷っている人や落ち込んでいる人にこそ見て欲しい、じんわりと沁みるような作品。

じんわりとかええねん、ド派手なダンスと大合唱のTHE・ミュージカル見せてくれや、という人には正直あまりオススメできないかも。

 

おまけ

 

日比谷シャンテ3階の本屋さん日比谷コテージには主演の石丸さんチョイスのチャップリンに関する著書や映像作品、また石丸さんの出演作品が直筆サインとともに展示されていました。

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