"美しき友情はやがて哀しき復讐へと変わる"
一部ファンに熱狂的な人気のある作品。美しさの中にスリリングな魅力がある楽曲と韓国ミュージカルらしい圧の強さと退廃的なストーリー。
観れば観るほどハマっていく中毒性があり、リピーターと中毒患者が異常に多い若干宗教的な人気作品。本日公開された上記のトレーラーを狂ったように一日中再生している人もたくさんいるほどの熱狂度。
2016年日本初演後に圧倒的な再演要望のもと、見事2020年に再演が決定されました。再演への予習・復習も兼ねて登場人物を紹介していきます!
このミュージカルではプリンシパル6人が1幕と2幕でそれぞれ違う役を演じるという仕掛けがあります。2017年公演のときはこのトリッキーさを打ち消すほど強烈なストーリー展開と世界観だったのでこの一人二役制度は『フランケンシュタイン』という作品の醍醐味!と言えるほどではないと思います。
むしろこの作品の魅力は独特すぎる退廃的な世界観であったり、スリリングで美しい音楽など、他の作品では絶対に味わえないフランケンワールドなのです!
とはいえ、1幕で出演した役者が2幕では全く違う役を演じるという仕掛けを知っているのと知らないで観るのでは楽しさが全然違うと思いますのでPart1ではそんな第2幕の個性溢れる登場人物をまとめていきます。
もくじ
ストーリー
19世紀ヨーロッパ。科学者ビクター・フランケンシュタインが戦場でアンリ・デュプレの命を救ったことで、二人は固い友情で結ばれた。“生命創造”に挑むビクターに感銘を受けたアンリは研究を手伝うが、殺人事件に巻き込まれたビクターを救うため、無実の罪で命を落としてしまう。ビクターはアンリを生き返らせようと、アンリの亡き骸に自らの研究の成果を注ぎ込む。しかし誕生したのは、アンリの記憶を失った“怪物”だった。そして“怪物”は自らのおぞましい姿を恨み、ビクターに復讐を誓うのだった。
(公式サイトより引用)
誰もが知っているあのゴシックホラーの名作フランケンシュタインをミュージカル化した作品。原作とは若干ストーリーや結末は異なるものの、原作通りフランケンシュタイン博士と、博士が生み出した"怪物"を軸に話が進んでいく。
神になろうとした人間と、人間になろうとした怪物の物語。
登場人物(1幕)
ビクター・フランケンシュタイン
"友よ許せ 僕の罪を 友よ許せ 地獄へ行け"
本作の主人公で科学者。戦死した死体を利用して夜な夜な死んだ人間を復活させる研究に明け暮れている。その研究理念は愛する人が死ぬ恐怖から解放された皆が幸せに暮らせる世界を目指した信念に基づくもの。幼い頃の母親の死がきっかけとなる。
とある事件で親友であるアンリがビクターの罪をかぶり、ギロチンの刑に処されてしまう。ビクターはアンリの首を研究室に持ち帰り、アンリを蘇らそうとする。蘇ったかのように見えたアンリの姿を見たビクターは、アンリが生き返った喜びよりもまるで研究の成果を証明したことへの喜びが僅かに勝っているように見えるほど。いわゆるマッド・サイエンティストである。
医学、哲学、科学、全てを網羅する天才ではあるが、死への恐れを克服できずにトラウマを抱え続けている。良く言えば研究熱心、悪く言えば目的のためなら手段は選ばぬ性格。
2017年公演、2020年公演ともにキャストは柿澤勇人/中川晃教のダブルキャスト。
冒頭は戦場のシーンであるため軍服を着用しているが、以降は黒いロングコードにインナーはスリーピースジャケットを着用。
主な楽曲
♪ただひとつの未来
♪偉大な生命創造の歴史が始まる
♪後悔
アンリ・デュプレ
"一緒に夢見れるなら 死んでも後悔しない"
ビクターの親友。身体接合術に長けた軍医。戦場で敵軍の兵士を治療しようとしたため殺されようとしていたところをビクターによって救われる。
ビクターの理念は当初は受け入れがたいものであったがビクターの強い信念に共感し、以来酒を飲み語り明かす親友となり、ビクターの研究を手助けするようになる。自分よりも他人のことをまず第一に考える慈悲に満ちた性格の持ち主。
1幕最後ではビクターの罪をかぶりギロチン刑に処されてしまう。ビクターの手によって蘇ったが、蘇った姿はもとのアンリではなく"怪物"であった。
軍医であるためかっちりとした中にも気品漂う服装。
2017年公演、2020年公演ともにキャストは加藤和樹/小西遼生のダブルキャスト。
主な楽曲
♪一杯の酒に人生を込めて
♪君の夢の中で
エレン
"少し特別だった孤独な少年の物語 誰にも理解されない 神よお守りください"
ビクターの姉。幼い頃に母を亡くした兄弟であるため姉であり母のような立場でもあり、ビクターのたった一人の家族である。
ビクターの研究を完全に理解しているわけではないが、姉としてビクターを支えている。また、ビクターの研究を支えるアンリのことを信頼しており、ビクターのことを宜しくと強くお願いする。
また、フランケンシュタイン一族の経緯を知るキーパーソンでもある。ビクターとエレンが幼い頃、母親が病に侵され、父親は呪術でそれを治そうとした。そして母の死体を持ち帰り蘇生させようとした幼いビクター。母親の死を機に狂ってしまったと噂された村人に家を焼かれ、父親は焼き殺されてしまう。そんな呪いの過去を胸に秘めた人物。
アンリの死体をいじくり回して"怪物"にしてしまったビクターに対して改心を迫るわけでもなくひたすら見守り続けるエレンはある意味作中いちの狂人かもしれない。
紫を基調としたシックなドレスが特徴的。
2017年公演は濱田めぐみ。2020年公演は露崎春女のシングルキャスト。
主な楽曲
ジュリア(画像右)
"共に生きて 呪われても 選んだこと だから後悔はしない"
ビクターの幼馴染で婚約者。ビクターの研究を純度100%の心で応援するビクターの心の拠り所。
戦場から帰還したビクターは研究に明け暮れ、ジュリアとの再会後すぐに研究室に閉じこもってしまう。そんな態度を取られてもなお、心からビクターを信じ、待ち続ける清らかで無垢な心を持った女性。
純白のドレスを纏った清純なルックス。
2017年公演、2020年公演ともにキャストは音月桂。
主な楽曲
♪あなたなしでは
ルンゲ
"主人の望みには何としても応えたい たとえそれがどんな望みであったとしても"
ビクターの執事。ビクターの研究が倫理に反していることは頭では理解しつつも「坊ちゃんのためなら」とひたむきにビクターを支える。
幼いころからビクターのお世話をしているため、ビクターがどれ程孤独な青春を送ったかを嫌と言うほど見てきたからこそ、ビクターの夢を叶えたい、支えたいと行動する。
冷静で優しい様子からは想像できないが、ビクターの実験に使うための死体の頭を渡すように葬儀屋に手配するなど、ビクターのために一心不乱に行動する。基本的に実直で、かつお茶目な性格。
常に白い手袋をしており、立ち振る舞いは執事そのもの。
2017年公演、2020年公演ともにキャストは鈴木壮麻。
ステファン(画像右)
"挨拶もせずに行くのか お前は何も変わっていないようだな"
ジュネーブの市長でビクターの叔父。ジュリアの厳格な父親でもある。ビクターの度が過ぎた研究への没頭には少々頭を抱えており、奇怪としか言いようのないビクターの態度・行動に不満を抱いている。
グレーを基調とした服装で、右手には大きな指輪を嵌めている。
2017年公演、2020年公演ともにキャストは相島一之。
登場人物(2幕)
ジャック
"コレ。壊れちゃって返品もできねえよ"
1幕でビクター・フランケンシュタインを演じた役者が2幕で演じる役(中川晃教/柿澤勇人)
1幕最後でアンリは、アンリを蘇らせようとしたビクターの手によって"怪物"となってしまう。もはやアンリの姿ではなくなってしまった怪物の姿を見て、銃殺しようとするも怪物を逃がしてしまうビクター。
なんとか逃げ延びた怪物は闘技場の女主人に捕われ、闘技場で死ぬまで戦い観客を喜ばせる見世物となってしまう。そんな闘技場の主人がこのジャックという役。一見ユーモラスであるが冷静で残虐な人間。
怪物に対しては物以下の乱暴で慈悲の欠片も無い扱い。金儲けと自分の快楽を満たすだけの道具のよう。かと思えば夫人であるエヴァに随分尻にしかれている様子。
主な楽曲
♪お前は怪物
怪物
"その前に教えてやる。俺が見た人間どものおぞましい話を、味わった地獄と、流し続けた血と涙の話を"
1幕でアンリ・デュプレを演じた役者が2幕で演じる役(加藤和樹/小西遼生)
ビクターの手によって怪物となってしまった"アンリであったもの"。人間でも動物でもない異型のバケモノである自分を産み落とした創造主であるビクターに復讐への誓う。
怪物は飢えて森を彷徨ったがついに食べ物がつき村里に下りていった。そこで闘技場の女主人エヴァに金の成る木として拾われ、闘技場で戦う見世物となる。
物語後半、怪物にアンリの頃の記憶があるような言動をする。しかし怪物にはアンリであったころのビクターへの友情や思い出をどこまで覚えているのか?それとも、覚えていたとしてもなお燃える復讐心なのか?ということははっきりとは怪物の口からは語られない。
クマが好物であり「クマ・・・オイシイ・・」はフランケンシュタイン屈指の名台詞。このセリフのせいで劇場の売店にはクマカレーが売っているとかいないとか。
怪物として目を覚ましたアンリにビクターは自分の黒いロングコートを着せているので怪物が着ているロングコードはビクターのコートがボロボロになったものです。
主な楽曲
♪俺は怪物
♪傷
エヴァ(画像右)
"こいつは怪物なんかじゃない 金!"
1幕でエレンを演じた役者が2幕で演じる役(2017年は濱田めぐみ/2020年は露崎春女)
闘技場の主人・ジャックの夫人。強欲で金に目が無い闘技場の女主人。ジャックと同じく残忍で容赦のない性格の持ち主。森で彷徨う怪物を殺そうとした手下たちを止め、闘技場で見世物として戦わせて金儲けの道具にしようとした。
エヴァの手下には娼婦のような派手な格好をした女性たちが大勢おり、彼女らをバックダンサーにエヴァが闘技場で歌う♪欲と血の世界は圧巻のショーステージ。セクシーで怪しげな魅力のある女主人。
主な楽曲
♪欲と血の世界
カトリーヌ
"逃げるの 遠くへ 誰もいないどこかへ"
闘技場で働く下女。熊に襲われたところを怪物に助けられたことがきっかけで、人間に虐げられ傷だらけの怪物に対して唯一優しく接する女性。幼い頃から父親に毎夜犯され母親に金で売られ、人間とこの世を恨んで生きていた。
人間とはいえない異型の怪物であったからこそカトリーヌは怪物に対して興味を抱きコミュニケーションを図ろうとする。怪物も徐々にカトリーヌに心を開くようになっていき、カトリーヌと会話するうちに怪物は言葉を覚えるようになった。
そして、怪物と一緒に人間がひとりもいない北極へ二人で逃げようと夢を語り合う。しかしフェルナンドの甘い誘惑に乗せられ葛藤の末とある行動を取ってしまうことでカトリーヌの運命が大きく動く。
怪物とのやりとりから、本来は純真で無邪気な少女であることを想像させるような天真爛漫な素振りを見せることもある。しかしカトリーヌの生への執着は彼女を狂わせるほどに激しいものである。
主な楽曲
♪生きるということは
イゴール
1幕でルンゲを演じた役者が2幕で演じる役(鈴木壮麻)
闘技場の門番である、闘技場の主人ジャックの助手としての動きもする。顔は白塗りで頭上にはボーリングのピンのようなものがついている。
ひょうきんな動きと養生でで闘技場の客を盛り上げる道化師かと思えば闘技場で負けた戦士の息の根をとめるなど要所要所に残虐非道な側面が見て取れる。
韓国版では"せむし男"として登場するが日本版では背筋はまっすぐ。
フェルナンド
1幕でステファンを演じた役者が2幕で演じる役(相島一之)
闘技場の上客である金の亡者でTHE・成金。ジャックに対して「利子を返せないなら担保として闘技場を渡せ。明日の試合でチューバヤ(フェルナンドの飼っているムキムキの戦士)に勝てたら支払いを3ヶ月待ってやろう」と提案する。
しかしこれはフェルナンドの策略であった。自由を与えるという甘い誘い文句で、チューバヤと戦うことになった怪物を薬で弱らせるようカトリーヌに持ちかけるのだった。
まとめ
2幕は1幕とちがい闘技場のシーンが多いですが、怪物が闘技場から逃げてからはまた1幕の登場人物たちが出てきます。
つまり、役1→役2からさらにまた役1に戻ってくる役者の切り替えもまた見どころなのです。