フランケンシュタイン

ミュージカル『フランケンシュタイン』全曲&全シーン徹底解説

2019年5月19日

 

 

2020年1月に日生劇場にて再演を迎えるミュージカル『フランケンシュタイン』

再演への予習&復習も兼ねて、全曲解説していきます!

 

HARI
記憶を辿って書いたのでもし間違ってたら教えてね!

 

1幕

1.ワーテルロー

プロローグの実験室のシーンの直後に始まる戦場が舞台のナンバー。

「空を覆う恐怖 そして そこら中に血の匂い」という男性ボーカルから始まります。

その後「戦争という欲望いつか天が裁きくだすぞ」という女性ボーカル。これだけの短い曲ではありますがこのたった数文字だけでも銃声飛び交う戦場の悲惨な状況であることがわかります。

 

曲が終わると軍医アンリが登場。負傷した敵兵を助けようとしたことからスパイの罪として自軍の中尉に銃をつきつけられます。戦争は殺しあうことではなく制圧することが目的だ。命は敵であっても助けなくては、と中尉に訴えるアンリ。

訴えむなしく中尉の「言い残すことはあるか?」という問いに対して間髪いれずに「ない。殺せばいい」と答えるアンリ。その後ビクターが登場し、アンリは命拾いすることに。

というのも、アンリは医師として身体接合術に長けており、そのことを知っていたビクターはアンリに自身の研究を問答無用で手伝わせようとしたのだ。

 

アンリが生きることにに対してあまり執着がないことがわかるシーンです。

 

 

2.ただ一つの未来

ビクターの実験室に連れてこられたアンリ。ビクターとアンリが互いの信念・理想をぶつけ合うナンバー。

ビクターの「生命ひとつの偶然 大宇宙の小さなトラブル 複製する過程で遺伝子が変異した それが生命の正体」というミュージカルらしからぬ鮮烈な一節で始まります。

 

アンリはビクターの考え方は神への冒涜だと非難するも、平和な世の中をつくりたいという根底にある信念は同じであることがわかり、曲の最後で研究室の巨大なセットの最上部でお互いの手をガッチリと握りあるビクターとアンリ。

曲中、4体の男性の死体(実験体)が人間とは思えない怪しい動きで踊るのがなんとも不気味。曲が終わると1体が動かなくなり、ビクターが研究員に「破棄しろ」と、まるで物のような命令する。

 

このシーンでは結局なぜアンリはビクターと手を握り合い、ビクターの研究に協力するようになったのかいまいちピンと来ませんが、のちにアンリの口から、アンリは神への惧れから死体の再利用の研究を1度辞めてしまっていた過去が語られます。

そのため、ビクターが神の所業の領域に踏み込もうとしていることに対してははっきりとNOと示す一方で、アンリもビクターともともとは同じ穴の狢だったことがわかります。

 

HARI
荘厳でスリリングなナンバー!

 

 

3.けれど君は

2.ただ一つの未来のあとにビクターの執事のルンゲが登場します。ルンゲとビクターが去った後にアンリが呟くように歌う短いナンバー。終わった後、アンリも走って二人を追いかけます。

2020年公演では何故かカットされていました。なぜカットした・・・

 

ここのビクターとルンゲのやりとりは作中唯一?と言っていいギャグ満載のシーン。アドリブ率がかなり高いシーン。

 



 

4.平和の時代

舞台はビクターの故郷に移る。ジュネーヴでビクターの叔父のステファン低で終戦記念パーティがー開催されます。タキシードとドレスの男女が終戦を祝い、華やかに歌って踊る。ステファンの唯一のソロ歌唱があります。

パーティーに現れるビクター。しかし参列者はビクターの様子を見て驚き、なにやらコソコソと噂話をしている様子。

 

ステファンのせっかくの歓迎にもぶっきらぼうにあしらうビクター。「挨拶もなしに行くのか?」というステファンに対し、言わされている感満々の「ただいま帰りました」

 

そして、ここで後の複線となるウォルター・ヘッセンというビクターに憧れる青年が登場します。

このシーンでエレンとジュリアも初登場。会いたかった!と純真な目でビクターを見つめるも無視してどこかに行ってしまうビクター。婚約者に対する態度とは思えない素振りである。

 

 

5.独り言

終戦パーティーも終わり、冷たくあしらわれてしまったジュリアがビクターへの想いを吐露するナンバー。ただ、ジュリアは本人はめちゃくちゃポジティブ。何があってもめげないどころの話ではないポジティブ加減。

ずっと会いたかったのに、待ってたのに、私の勘違いなのかな?思い違いなのかな?という少女漫画のような歌詞。しかし韓国での再演版ではこのシーンはばっさりカットされています。

 

それもそのはず、このシーンなくても成り立つどころか、正直ちょっと不自然。ビクターとジュリアは婚約者同士と言えど、その関係性はあまり本作では深堀する必要がないほどあっさりしたものなので。

 

ちなみにこの作品でジュリアが断トツでメンタル強者説が私の中でじわじわ育ってます。

 

 

6.孤独な少年の物語

フランケンシュタイン城に移ります。

ビクターや、ビクターに対する町人の態度に違和感を感じたアンリは、エレンに理由を聞きます。そこでエレンはアンリにフランケンシュタイン一族の呪いの過去をこの曲に乗せて語ります。

 

そして、このシーンでビクターの幼少期・リトルビクターが登場します。

医者であったビクターの父。しかし母がペストに感染してしまい亡くなってしまう。病気でなくなった母を生き返らせようと、死体を抱いて歩くリトルビクター。

フランケンシュタイン一族のせいで死体が街を歩き回っているという噂が蔓延してしまい、町人たちはパニックに。そして、フランケンシュタイン城に火を放ってしまう。

 

城に取り残されたリトルビクターを救おうとした父は火にとりこまれ、亡くなってしまう。

その後リトルビクターは幼少期のジュリア、つまりリトルジュリアに出会います。生命創造に興味を持つリトルビクターを恐れることなく無邪気に接するリトルジュリア。次第に二人は仲良くなっていきます。

 

しかしある日、死んてしまったリトルジュリアの子犬をなんと蘇らせてしまうリトルビクター。かけつけたルンゲ・エレン・ステファンは絶句してしまう。

生命はただの原子の塊である、蘇生など造作もないことなのであると言わんばかりに「生命有機の結合、細胞電気に反応、死亡は一時の放電、充電できうる生命、老廃物中和させる血管、」と、徐々にテンポが早くなり畳み掛けるリトルビクター。

 

リトルビクターを平手打ちするステファン。現代でもこんな小さな子がこんなことを言い出すとちょっと驚いてしまうので、この当時であれば不気味どころの騒ぎではないのだと思います。ましてやキリスト教徒ですから。

 

ビクターのうちに潜む心の闇を察知するエレンの「知らなかった胸の内を あの子母の死を認めてない」という悲痛な叫びが印象的。

しかしエレンは「少し特別だった孤独な少年」という歌詞の通り、住民達に疎まれようが怖がられようがエレンにとってビクターは頭のおかしい人間なぞでは決してなく、ビクターは他の子たちに比べて変わっていただけ。それもほんのちょっとだけ。という考え方であることがわかります。

エレンのビクターへの愛情は、幼いころに両親を亡くした兄弟であることもあってか姉というよりは母のほうが近いと思います。気丈に振る舞うエレンですが、一歩間違えば壊れてしまうような脆さと儚さを持った女性であることがわかります。

 

フランケンシュタイン一族の呪いの過去がいつか消えるようにと懸命に神に祈るエレン。しかしエレンの祈りむなしくビクターは怪しげな研究をやめる気は一切ないし、町人とコミュニケーションをとる気もあまりない。

「長い冬が過ぎれば光そよぐ春が来る」という歌詞の通り、フランケンシュタイン一族はずっと孤独な冬の中に囚われているのです。

 

HARI
あんまりお姉ちゃんを困らせるんじゃないよ・・・

 

 

7.一杯の酒に人生をこめて

酒場でのシーン。アンサンブルも含めて歌えや踊れ、フランケンシュタイン唯一の皆ハッピーなシーン。

酔っぱらいながらビクターと酒場の客たちが登場。人類はもうすぐ滅びるぞ!と酔っぱらって叫んでいたビクターを殴る蹴るする酔っ払いたち。

 

そこでアンリが登場。ビクターと喧嘩する男たちを制止しようとして、皆さんのお代は全て私が奢りましょう!と提案し、場を一気に盛り上げるアンリ。

一方ビクターは、死体のような腐った脳では実験にならない、新鮮な脳が必要だ。だが、新鮮な脳なんてどうやって手に入れる?それこど殺人でもしなければ。と冗談半分、半ば本気で酔いどれるビクターがアンリにくだを巻く。

 

酔いつぶれた姿のビクターをはじめて見て驚きながらも親友らしく語り合うシーン。ここでアンリははじめてビクターに自分のことを語ります。自分には親がおらず天涯孤独だが君がいるからそれで十分さ、と。

ちなみにここで「野良犬が草を食ってるぜ」という歌詞が出てくるのですがこれは韓国語では"馬鹿げたこと"というスラングだそうです。安易すぎる直訳ぅ・・・

 



 

8.殺人者

フランケンシュタイン好きの頭から離れなくなる「あ~~~人殺し~~~ウォルターと葬儀屋~殺した~や~つ」という例のメロディーから始まる。ウォルターと葬儀屋を殺した殺人犯としてアンリが住民に激しく問いただされる。

7.一杯の酒に人生をこめての愉快なシーンから間髪要れずに迫真の住民たちが登場するので初見のときは何が起こったかついていくのに必死となるシーン。

 

そして、歌詞自体はおぞましい内容ですがメロディーが軽快かつ頭からこべりついて離れない曲調なので観劇後思わず口ずさんでしまう曲No.1である。(作中何度も歌詞を変えてこのメロディーが登場します)

当然、アンリは殺人など犯していません。実はビクターの罪を自らかぶったのです。実はビクターは執事であるルンゲに、葬儀屋から死体を金と引き換えに調達するように手配させていました。

 

しかし葬儀屋が準備した死体はビクターに憧れる青年ウォルター・ヘッセンの首。金に目がくらんだ葬儀屋がウォルターを殺してウォルターの死体を手に入れたのです。ウォルターを殺害されたことにプッツンしたビクターはなんと葬儀屋を石で殴り殺害。(おいおい)

 

このままでは君が捕まってしまう。君は人類の未来を救うために生き残るべきなんだ。研究を続けるんだビクター。と、アンリは自ら罪をかぶりました。

 

ウォルター母の「あの悪魔を死刑にして!」というソロパートが素晴らしい。

 

 

9.僕はなぜ

殺人犯として拘束されたアンリ。このままでは間違いなくギロチン刑に処されてしまう。ビクターの叔父のステファンは市長なので、犯人がビクターであった場合少なくともギロチン刑は免れるはず。

そうしないとアンリが処刑されてしまうのよ!今すぐ自首しなさい!とビクターに叫ぶエレン。あまり反応のないうな垂れたままのビクターに対してハッと何かに気づくエレン。

 

実験に使える新鮮な脳。つまりビクターはアンリの首が欲しいのかもしれない、と。

エレンからそのことを指摘され、ビクター自身も自分は親友の首を実験に使いたいのかもしれないと思っていることに気づく。そして1人部屋に取り残されたビクターが歌うナンバー。

 

「新世界つくるための犠牲」なんて歌詞が出てきたりと、葛藤しているわりには結構アンリの首で実験する気まんまんのビクター。親友の首でさえ自分の欲望を満たすために利用しようとするビクター。ビクターの中に潜む本当の狂気に思わずドン引きするナンバーである。

ここで引き帰してさえいれば・・・ある意味、ここがビクターやビクターの大切な人々にとっての運命の分かれ道となる重要なシーン。

 

曲の最後に「アンリを死なせたら僕は殺人者」という歌詞が出てきますが、観客の誰しもがツッコミを入れたはず。

 

HARI
葬儀屋を殺してるんだから既に殺人者だよ!!

 

 

10.君の夢の中で

アンリの大ナンバー。フランケンシュタインを代表する1曲のひとつ。

葛藤の末ビクターは法廷で証言しますが、ステファンの鶴の一声で却下されてしまう。そしてアンリの処刑が決定してしまう。

 

投獄されたアンリとビクターが牢の柵ごしに面会します。やっぱり僕の代わりに君が死ぬなんておかしい!とアンリに訴えるも、これでいいんだ。研究の存続には君が必要なんだよ。君の研究はきっと世界を救うよ。とビクターを説得するアンリ。

そしてそのまま断頭台に連行されるアンリ。泣きながら縋るビクターをよそに毅然と断頭台に登っていくアンリ。曲が終わると見物に来た民衆たちの野次雑言に耐えながら断頭台の露と消えてしまう。

 

前述したとおり、アンリのみならずフランケンシュタインを代表する1曲。引き離される親友と、切ない表情のアンリに涙なしでは見られないナンバー。

「一緒に夢見れるなら死んでも後悔しない 全てを捨てても君の夢の中で生きられるなら」という歌詞の通り、死を受け入れ未来をビクターに託すアンリ。

 

ビクターに出会わなければもともとこの人生には意味がなかった、だから死ぬことに後悔はない。ビクターの夢の中で生きられれば満足さ、という曲。

 

 

11.偉大な生命創造の歴史が始まる

アンリの首が入った血まみれの袋を持ったビクターが研究室に入ってくるところから始まるナンバー。これこそフランケンシュタインを象徴する1曲。

観客の誰しもが呼吸を忘れて見入るビクターの見せ場というだけでなく楽曲の歌唱難易度も相当なもの。アンリの首と他の胴体を接合してアンリを蘇られる人体接合実験をいざ成功させんと臨むビクター。

 

「生命創造の歴史が今 始まるのだ俺の強い意志で 背くべき者は神の摂理領域さえ犯そう」という歌詞の通り、もはや神にでもなったかのようなビクター。

「地獄を抜け出てきた愛しき魂、聞けお前に命令するいますぐ蘇るのだ」と、アンリを蘇らせようと、これまでの研究の成果を発揮しようとする。

(なんで地獄・・?)

 

曲が終わると本当にアンリが蘇ります。と思いきや、目を覚ましたアンリはもはやアンリではなく、"人のような形をした何か"であった。

グニャグニャとした人体とは思えないような奇怪な動きとうめき声。まさに"怪物"の誕生。こんな姿になったアンリを見て実験は成功したんだと歓喜に打ち震えるビクター。

 

そしてこの後のビクターの振る舞いはダブルキャストの中川晃教さんと柿澤勇人さんとで大きく異なります。

まず中川さんのビクターは実験が成功し、親友であるアンリを蘇らせることができたことに対して喜びを示しています。一方で柿澤さんのビクターは科学者として人体接合実験を成功させたこと、神の所業を成し得たことを喜んでいます。

 

二人とも優しい声で何度もアンリ、アンリ、と呼びかけますが、中川さんは「アンリ、僕だよ(君の親友のビクターだよ)」というニュアンスですが、柿澤さんは「アンリ、僕だよ(君をつくった創造主だよ)」というニュアンスの印象でした。

ビクター、アンリともにダブルキャストなので前編通して芝居にそれぞれの個性がありますが、このシーンのビクターほど印象が異なる演技の違いはないと思います。

 

韓国版の資金のかかった荘厳かつ精巧なセットとは程遠くて悲しくなりますがそれを打ち消すほどのキャストの歌唱!

 

12.また再び

しかし怪物となってしまったアンリはビクターの首を絞めるだけでなくルンゲを噛み殺す程暴れまわってしまう。もはや人間とは思えない行動を繰り返すアンリの姿を見たビクターは絶望する。

「友よ許せ僕の罪を 友よ許せ地獄へ行け」と、銃で撃ち殺そうとする。

 

HARI
さっき地獄から呼び出しておいてまた地獄に送り帰えすんかい

 

しかし実際のところ怪物アンリに殺意があったわけではないです。よく見るとわかるのですが、怪物はまさに生まれたての赤子のような状態。乱暴にされると乱暴で返すだけ。

ルンゲに対しても、ルンゲが怪物に殺意を向けたから怪物も殺意で返しただけであって、たしかに怪物に攻撃する素振りをみせなかったエレンに対しては何もしていません。

 

ビクターに対してもただじゃれていただけだと思います。ただ力加減が怪力だっただけで。

そのことに気づいたビクターが怪物に優しく接しようとすれば、大きく違う結末となったはず。ビクターはとにかく思い込みが強くて気が早いんですよね。何事に対しても。

しかしながらビクターに銃殺されそうになった怪物は窓から逃亡してしまい、アンリー!と叫ぶビクターの姿で1幕は終わります。「アンリ~~!ヒィ~~~!(裏声)」と歌い上げるときもあればないときもあり。

 

さて、ここまでが1幕です!

 

2幕

1.平和の時代

2幕、幕開けのナンバー。1幕から3年後の世界になっています。

タキシードとドレスの男女が優雅に踊るナンバー。1幕最後が衝撃的な終わり方なので2幕頭でどんなことになってしまうのか覚悟してみると、意外と和やかに始まります。

 

 

2.あなたなしでは

ビクターとジュリアが結婚し愛を誓い合うナンバー。1幕のビクターはジュリアに対して愛情のそぶりも感じられなかったので正直違和感しかないです。

ちなみに韓国再演版ではばっさりカットされてます。そりゃそうだ、このシーン変だもの。

 

日本ではあまりヒロイン役をないがしろにできない事務所的な理由もあるんでしょうかね。これまで見てきた1幕のパラレルワールドかなにか?と思ってしまうほどあまりにも少女漫画チックなシーン。

曲終わるとやはり3年間のことが頭を離れない様子のビクターと、慰めるジュリア。そしてジュリアのセリフから、ビクターとエレンも既に和解していることがわかります。

 

雷鳴に怯えるビクター。やはり怪物を生み出してしまったあの日のことが忘れなれない様子。エレンとビクターが3年間どのように過ごしたかは作中語られませんが、それにしてもエレンの器量の大きさよ・・

エレンにとっても、ビクターに仲良くしてくれるアンリは大切な人だったはずで、そのアンリの死体をめちゃくちゃに改造して挙句の果てに銃殺しようとした人のことを、いくら弟とはいえなかなか許せたもんじゃないはず。

 

まあエレンは怪物が逃げたときには既に気を失ってしまっているので、ことの顛末をビクターが隠したのかもしれませんが。

どちらにせよ、アンリとのことは無かったことにしてでも弟には幸せになってほしいという究極の姉心なのかもしれません。

そんな二人に、ステファンが行方不明になったという知らせが入ります。散歩に行ったっきり帰ってこない、飼い犬が食いちぎられている、という物騒すぎる報告。

 

やっぱり幸せシーンは一瞬でおわるフランケンシュタイン。場面が大きく転換します。

 

 

3.行方不明

フランケンシュタイン名物・例のメロディー「あ~~~」で始まるナンバー。またしても唐突。ビクターが村人たちと一緒にステファンを暗闇の中必死で捜索します。

1幕ではビクターを忌み嫌っていた態度の村人たちですが、あれは一体なんだったんだと思うほど普通に一生懸命捜索活動してます。

 

3年間でビクターが村人たちと上手くやってきたのかもしれませんが、市長であるステファンを懸命に探しているだけで別にビクターのためにやっているわけではないのかもしれません。

 

 

4.逃亡者

必死にステファンを探すビクターの前にヌッととある人物が姿を現します。それがまさに怪物。

「ビクター・フランケンシュタイン。俺の創造主よ」というトレーラーでもよく聞くセリフ。

 

そんな怪物に「お前。喋れるのか」と驚いた様子のビクター。第一声がそれかよというツッコミはなしで。たしかに驚くのも無理はない。ビクターが知っている怪物は獣のように暴れ狂う奇怪な生き物だったので普通に直立して人語を話す怪物の姿はなかなかの衝撃だったのかもしれない。

ビクターの銃から逃げ切った怪物がどのようにして3年間を過ごしてきたか語りだし、ここから長い回想シーンに入ります。

 

闘技場の女主人エヴァの飼い犬を食べたり野生のクマを食べたりと、とにかく飢えを満たすために本能のままに行動する怪物。闘技場の女中カトリーヌもここで初登場。クマに襲われているところを怪物が偶然にも助けます。

しかし、闘技場の見世物としての素質を怪物に見出したエヴァによって、怪物は捕えられてしまいます。

 

このシーンでは、3年前のビクターは研究室から怪物を逃してしまったあとに、町人たちを引き連れてまで怪物を殺そうと追っていったことがわかります。

怪物になってしまったとはいえ親友の顔をした人に対する殺意が高すぎるよね。

 

 

5.欲と血の世界

エヴァの「こいつは怪物なんかじゃない。金よ・・・金!」という一声とともに場面が大きく転換します。

ここからしばらくはジャックとエヴァがとりしきる闘技場のシーンが続きます。「欲と血の世界」は闘技場の女主人であるエヴァと、取り巻きのエヴァダンサーズがパフォーマンスするナンバー。

 

金!女!暴力!が蔓延している血なまぐさい闘技場がどんな場所であるかをド派手なパフォーマンスでまざまざと見せ付ける。というのも、闘技場といっても正規の格闘場ではなく、本気の殺し合いに大量の金が賭けられるような闇の闘技場。

「愛に泣いて金に狂う男たちの最後の砦」という歌詞のとおり、ギャンブラーたちが夜な夜な集まる怪しい場所。

 

実際に曲中に2戦行われており、1戦目はアンサンブルによるファイター同士の戦い。敗戦した方は最後ルンゲという闘技場の主人ジャックの助手によってトドメの一撃を食らわされ、絶命します。

 

大盛り上がりの観客の中、2戦目はなんと怪物が登場。1戦目の勝利者とのマッチ。怪物が優勢になりますが、なかなかトドメを指さない怪物に観客はだんだんイライラ。

これまでビクターのコートを着ていた怪物がファイター仕様の衣装で登場。この格好だと怪物感がさらに増します。

 



 

6.お前は怪物だ

闘技場の主人のジャックが登場。

「気のふれた科学者が創った、おもちゃの化け物なんだ」という歌詞のとおり、お前は人間なんかじゃない、怪物なんだ!と怪物に刷り込むジャック。

しかも殴る蹴るの暴行付き。最後には焼き鏝を押し付けられてしまいます。

 

おぞましい歌詞とシーンではありますが、曲自体はジャズっぽい非常にオシャレなナンバー。いい意味で浮いてる1曲かなと思います。

 

 

7.そこには・・・

ジャックが去った後、こっそりと怪物のもとを訪れる女中のカトリーヌ。

女中というよりはもはや奴隷のような扱いを受けており人間を恨んでいる彼女。しかし怪物にはクマから助けられた経緯もあってかカトリーヌからコミュニケーションを図る。

 

カトリーヌの「こ・ん・に・ち・は」に対してオウムのように「こ・ん・に・ち・は」と返す怪物。カトリーヌとのやりとりを通して徐々に言葉を喋るようになります。

そしてここで登場するフランケンシュタイン屈指の名言「クマオイシイ」の登場。ヴィーガンも真っ青の名台詞でございます。

暴力には暴力で返して、愛情には愛情で返す怪物。

 

カトリーヌは、自分は昔から人間に虐げられて生きてきたから誰もいない北極にいつか行ってみたいと怪物に語ります。そして怪物も一緒に行こうとかなりノリ気。

怪物とカトリーヌが夢を語り合うナンバー。この二人にとって作中唯一と言っていい幸せな瞬間なんじゃないでしょうか。まるで恋人同のようにじゃれあう二人。

 

 

8.人間のふり

そんな幸せも一瞬で終わるのがフランケンシュタインの醍醐味。

カトリーヌを虐げるジャックとエヴァを見て「やめろー!」と叫ぶ怪物。そんな怪物を見て「あんた喋れるのかい」と驚くエヴァ。

 

9.生きるということは

ステファンから「怪物にこの薬を飲ませれば自由の身にしてやる」と取引を持ちかけられるカトリーヌ。

怪物の力を弱める薬なので、当然飲ませれば怪物は戦いで力を発揮できず成すがままに殴る蹴るされてしまう。

せっかく仲良くなれたのに。しかしカトリーヌの生と自由への渇望は抑えられないほど強いものであったので怪物に渡す水に薬を混ぜます。

 

曲中でカトリーヌから水を渡された怪物がこれまで見せたことのないような安心しきった嬉しそうな表情をするのがものすごく切ないシーン。

ジュリアと同じ役者が演じる役とは思えないほど低く力強い激しいナンバー。

 

カトリーヌの地獄のような生い立ちと人生が語られますが、ここまでエグい内容の歌詞はミュージカルではなかなか聞けない気がする。

怪物はカトリーヌと出会ってから人間らしくなっていきますが、ステファンに取引を持ちかけられた以降のカトリーヌは本能に従う獣のようになっていく対比が面白い。

 

 

10.欲と血の世界(リプライズ)

またしても闘技場での戦闘シーン。怪物もいつも通り戦わされますが、ジュリアが盛った薬のせいで全く力の出ない怪物。

案の定、ステファンが用意した対戦相手のチューバヤにボコボコにされてしまいます。

 

試合終了後、ステファンが薬を使ったことがエヴァとジャックにバレてしまい、ステファンはエヴァに刺殺されてしまいます。そして、怪物は戦えない役立たずの"壊れたおもちゃ"として捨てられるように放置されてしまいます。

 

 

11.俺は怪物

ジャック、エヴァを中心に人間たちに虐げられた怪物による2幕ビックナンバー。

アンリの代表曲が1幕の「君の夢の中で」であれば、怪物の代表曲はこの「俺は怪物」と言っていいほど印象的なナンバーです。

 

怪物の怒り・悲しみ・憎しみを全て表現しなければならないだけでなく、誰かから愛されることへの渇望もこめなければいけないのでかなりの難曲だと思います。役者の"怪物力"が試される1曲。

 



 

12.殺人者

突然話は現在に戻ります。つまり、2幕頭の「欲と血の世界」の直前のタイムライン。

またしても突然「あ~~~~ひとごろし~~~」と、例のメロディで始まります。ここまでこのメロディが作中何度も繰り返されると本当に頭から離れなくなる。

なんとエレンがステファン殺人の容疑を村人たちからかけられています。

エレンを絞首刑にしようとする村人たちをビクターが必死に叫んでとめようとしますが努力むなしくエレンは絞首刑に・・・

 

ろくな裁判もせずに絞首刑にするほどなので、やはり村人としてはフランケンシュタイン一族への忌みは消え去っておらずやっぱりお前らはそういう一族なんだな!と思い出したかのように確信したのでしょうかね。

(いや、単純にこの作品の展開が急すぎるだけかもしれない・・・)

 

そして、ステファンを殺したのはエレンだと村人たちに思い込ませるように仕組んだのは、ビクターへの復讐を誓う怪物の仕業です。

 

 

13.その日に私が

絞首刑にされてしまったエレンを想ってむせび泣くビクターのもとにリトルジュリアが駆け寄ってきます。

そしてそこにはエレンがビクターの荷物を持って登場。もちろん、全てビクターが見ている幻影です。幼い頃、忌み嫌われ外国に留学することになったビクターが故郷を発つ昔の思い出の世界が繰り広げられます。

エレンに泣いて縋り付くビクターに、なに泣いてるの、と慈しみに満ちたエレンが微笑む。

 

エレンはビクターの姉ではありますが、やはり姉というより母に近いポジションかなと(このシーンは特に)そしてこのシーン、作中最も涙を誘うシーンだと思います。

 

 

14.絶望

絞首刑にされてしまったエレンの死体を実験室に運ぶビクター。

「姉さん。今蘇らせてあげるからね」と、囁くように話します。アンリを怪物にしておいて、涼しい顔して未だに人体蘇生を実行しようとするなんて。こういうところにビクターという人間の根幹が色濃く現れていると思います。

が、実験室の装置はめちゃくちゃに破壊されてしまっており、到底蘇らせることなんてできない状況。もちろん、破壊したのは怪物の仕業。

 

15.今夜こそ

ルンゲ、ステファン、エレン、と大切な人を怪物の復讐によって奪われ続けるビクター。

衛兵部隊を雇い、怪物を殺そうと決意するビクター。「気を引き締め見回れ あいつは悪魔だ!ひるむな」と衛兵部隊を炊きつけるビクター。生まれたての怪物に地獄へ行けと言って銃殺しようとしたり、悪魔だなんだって、ひどい言い様。

 

この曲自体は短いですが、メロディは1幕冒頭の「ただひとつの未来」の出だしと同じで緊迫感溢れるかっこいいナンバーです。

そして、傭兵部隊は全員微妙に衣装や武器が違うのでまさにビクターが集めた精鋭!殺しのプロ集団!という物々しい雰囲気ですが怪物によって全員やられてしまいます。精鋭(笑)って感じですね・・・

 

16.ジュリアの死

そして、ジュリアの命すら怪物の手によって奪われてしまいます。ベッドの上で真っ白なドレスが真っ赤に染まって死に絶えるジュリア。

ジュリアを掻き抱くビクターのもとに怪物が現れ、俺は北極でお前を待つ、と言い残して去っていきます。

 



 

17.後悔

ルンゲ、エレン、ジュリア、ステファン。大切な人たちを全員殺されたビクター。

「みんな死んだ 僕のせいだ」という歌詞のとおり、ここでやっと自分の犯した罪を後悔しだすビクター。何度か観てると冷静に「いや、遅すぎだよ!」とツッコまざるをえない。

そして、2幕は1幕とは違い怪物が中心となるのでビクターのがっつりソロ歌唱は実はあまりないのです。そのため、このナンバーはまさに絶唱の1曲。

 

神になろうとした自分の愚かさをひたすら憎み懺悔するも、大切な人たちはもう2度と帰ってこない。しかも自分のせいで。まさに後悔の1曲。

とはいえ曲調自体は伸びやかで神聖な雰囲気のあるメロディになっています。教会で神に懺悔するようなイメージなのかな。

 

 

18.傷

森での怪物のソロナンバー。「俺は怪物」とは正反対の美しく切ないバラード。

「一人の男がいた」という歌詞で始まります。森で出会った少年に、神になろうとした創造主ビクターについて語る怪物。あまりにも穏やかな怪物。もうビクターへの復讐心は薄れてきてるのかな?なんて思ってしまうほど。

まだ幼い少年は怪物に無邪気に話しますが、大人になればお前もあいつらと同じように俺を怪物扱いするんだ、と、少年の首を絞めようとする怪物。

 

少年が逃げ出したあとに「一人の怪物がいた」と今度は自身のことを歌い出します。

作品全体を通して韓国版と異なるシーンは随所にありますが、このシーンだけ群を抜いて改変されてます。日本版は少年の首を絞めようとするだけですが、韓国版はなんと少年を湖に落としてしまいます。

というのも、韓国版の少年は本当の少年ではなく、怪物の中にあるビクターの象徴のような存在として登場します。そのため、本当に殺人を犯したわけではないわけです。

 

日本版は怪物の中のビクター像ではなく、本当に生きているただの少年という感じでした。なんでこんな改変したんだろう?こんなへんぴな場所に少年が迷子になって現れるなんておかしいのに、と思います。

 

19.俺はフランケンシュタイン

物語の最後の舞台。まさに北極にビクターと怪物はたどり着きます。北極に1人佇む怪物のもとにヨロヨロになったビクターがやって来ます。

怪物を見るやいなや殺そうと襲いかかるビクター。しかし、クマを素手で倒したり闘技場で闘ってきた超武闘派の怪物に研究者のビクターが敵うわけもなく、易々と反撃されてしまいます。

 

そして、銃を突き付けられたビクターは観念したかのようになりますが、銃をビクターに渡して「殺せ」と言わんばかりに両手を広げる怪物。

でもやっぱり撃てないビクター。いくら怪物といえど、顔はアンリだからね・・・

 

そんなビクターに、落ちていたナイフで襲いかかろうとする怪物。反射的に引き金を引いてしまうビクター。もちろん、怪物は撃たせようと思ってわざとやったわけです。

「ビクター・・・これが俺の復讐だ・・!」と言い放ち、息を引き取る怪物。死に顔はまるで見慣れたアンリの顔。全て終わってしまったこの瞬間にビクターが歌うのがこのラストナンバーの「俺はフランケンシュタイン」です。

 

曲自体はかなり短いですが、ビクターの絶唱のち、完結。

 

まとめ

終わり方があまりにも劇的すぎるので、正直初見の時は残尿感がハンパなかったです。

だけど何度も観てると、そうそうこれがフランケンシュタインなんだよな・・と謎の満足感を感じる。

 

作品自体のレビューや自分なりの考察はまた別の機会で書こうと思いますが、ひとつ言えることはこの作品はあくまで"ビクター・フランケンシュタイン"という人間の物語なんですよね。

ビクターとアンリの悲しき友情の物語として表現されることが多いですが、自分はビクターという人間のエゴだったり神になろうとした傲慢さへの報いであったりといった側面が、この作品の神髄だと思ってます。

 

ストーリー展開が急すぎたり、話が終始暗かったり、正直万人受けする作品とは口が裂けても言えないです。が、楽曲レベルは誰が聞いても素晴らしいと思うはずです。それ程、どの曲もスリリングで美しい珠玉のナンバーだらけです。

あんまり好みじゃないし、観なくていいかな・・と思ってる人でも、ぜひぜひ。楽曲を聴くだけでもお釣りがかえってきますから!

 

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