石丸幹二 ジキル&ハイド

時が来た(ジキル&ハイド) │ 実はミュージカル界屈指の死亡フラグソングの魅力

2020年1月6日

 

ミュージカル『ジキル&ハイド』の名曲!

 

最近テレビなどの大衆メディアでミュージカルの曲が披露される機会が格段に増えました。

その中でも「時が来た」という曲が歌われる確率がかなり高いため、ミュージカルに詳しくない人でもなんか聞いたことあると感じる1曲かもしれません。

 

一見すると希望と情熱に満ち溢れたキラキラとした曲に聞こえますが、実はミュージカル界屈指の壮大な死亡フラグ曲です。

 

楽曲の設定を知っているとより面白い!本記事ではそんな「時が来た」についてサックリ書いています。

 

「時が来た」の歌詞

闇を抜け 今こそ 光目指し 歩き出そう
これまでの毎日が 無駄ではない
迷いはない

今夜こそ 今こそ
運命が動き出す時
積み上げた全てが
報われる今 ひとつになる

時が来た
今こそ 二度とない 果てしない時が
今こそ 見果てぬ夢 手に入れる時だ

この胸 この命が
生きる意味を見つけた 生きる意味を

今 時が 今こそ
最後だぞ 運命の試練
命をかけても
時が来た 待ちわびた時が

時が来た 逃すな
振り返ることは もはやない
この日を忘れないぞ この時に
すべてかけ 素晴らしい時へ

 

うーん、どこからどう読んでもキラキラとした希望100%の歌詞です。終わりの始まりの曲には全く見えませんね。

次からは、この曲が登場するミュージカル『ジキル&ハイド』という作品についてちょっと触れます。

 

ミュージカル『ジキル&ハイド』とは

● 原作は1886年出版『ジキル博士とハイド氏』
● 1990年アメリカでミュージカル化
● 作曲は有名音楽家フランク・ワイルドホーン
● 日本では2001年に初演
● 略称はジキハイ
● 動画の1:50~に「時が来た」

 

原作の『ジキル博士とハイド氏』は小説自体を読んだことはなくとも多くの人がストーリーくらいは知っている超有名小説です。

ザックリ言うと善のジキル博士と悪のハイド氏の二重人格の物語です。

 

ストーリー

このジキル博士は老いて精神をやられてしまった実の父を救うための薬の研究をしている科学者兼医者。人間の中に潜む善と悪の心を完全に分離する薬を発明しようと研究しています。

 

なにやら怪しげなピンク色の液体がその薬。この液体、遠目の席からでもハッキリわかるほど発光した超不気味な色なのでジキル博士が箱から出した瞬間は結構驚きます。

その薬を病院の患者で試そうとするのですが、権力者たちに狂ってるぞ!と猛反対されてしまいます。じゃあ実験できないじゃないか・・・と途方に暮れるジキル博士は閃きます。

 

「自分で飲んで試せばいいじゃないか!」

 

長年の努力はついに報われるぞ!この機会を逃すな!今こそ見果てぬ夢を叶える時が来たのだ!!

そう、「時が来た」というナンバーはこのシーンで歌われる曲なのです。

 

歌唱直後に実験記録にメモをしたジキル博士は意を決してグビーッ!と飲み干します。何も起こらないかと思いきや、突如体に異変が。のたうち回るジキル博士は”悪の存在”であるハイド氏に豹変してしまったのです。

 

 

「自由だ~~~!」と叫んでそのまま真夜中に欲望のままに外に飛び出し、道行く女の子の手を舐めてみたりと、そらもうハチャメチャします。でもちゃっかりコートとハットはしっかり着て外出するあたりハイド氏は結構オシャレさんですよね。

 

つまり、簡単に結果を言ってしまうと研究は失敗したんです。時は来ませんでした!

 

 

物語の結末(ネタバレあり)

で、結末はどうなったかという話に移ります。

自分が発明した薬によって一度ハイド氏の悪の人格が目覚めてしまったジキル博士は、自分の意志ではハイド氏をコントロールすることができなくなっていきます。

ハイド氏として暴れまわっている時間、ジキル博士には意識がありません。目が覚めたら自分の身近な人が死んでいる状態。(というかハイド氏が殺害しまくった)

 

もうお前はおしまいだ!とジキル博士は自らの人格であるハイド氏と闘います。それを契機にハイド氏は消えました。

 

 

安寧の日々を取り返したジキル博士は婚約者エマと結婚式を挙げます。家族や友人に囲まれて幸せな結婚式の中、またハイド氏の人格が蘇ってしまう・・・!

婚約者を傷つけようとするハイド氏の人格を抑えるため、ジキル博士は親友であるジョンに「俺を撃て!」と叫びます。結果的に、ジョンはジキル博士に発砲。そして死亡。

 

親友の手によって目の前で銃殺された婚約者の亡骸を抱きかかえる花嫁のエマは「自由よ 二人は いつまでも」と呟くように歌います。

泣き崩れるジョン。絶望とも解放とも言えぬ複雑な表情をするエマ。呆然とする結婚式の参列者たち。彼らを慰めるかのようにゆっくりと幕がおります。

 



 

全ての元凶!超死亡フラグソング

・ジキル博士自身は死亡
・ジョンは親友を自らの手で銃殺
・エマは結婚式で新郎が目の前で死亡

 

ジキル博士が「自分が発明した薬を自分で飲んで試す」なんてことをしなければ、こんな不幸は訪れませんでした。

「時が来た」を歌う前までは、親友と呼べる存在もいて綺麗で優しい花嫁もいて、順風満帆すぎる人生だったのに。歌った直後からジキル博士の転落人生が始まってしまうのです。なんて曲だ!

 

 

それだけではなく、ハイド氏の人格で夜な夜な暴れまわったジキル博士は無意識のうちに大量殺人を犯しています。なんと7キル。

作中でこんなに人をあやめる主人公、ミュージカルではなかなかいません。しかも全員の殺害シーンは語りや演出ではなく実際にお芝居として表現されているので見る人にとっては結構ツラいかも。

 

ハイド氏が殺害した登場人物

・ベイジングストーク大司教
・サベージ伯爵
・プループス卿
・グソロップ将軍
・ビーコンズフィールド伯爵夫人
・ストライド
・ルーシー

 

生き残った親友のジョンや未亡人となってしまったエマは頭の狂った科学者と親しかった人物というレッテルからは逃げられないでしょう。物語が終わった後の世界においても、彼らに悲惨な日常が待っていることは想像にたやすいことです。

 

つまり「時が来た」は全ての不幸の引き鉄となった曲なんです。これがなければ登場人物たちはこれほどの不幸に陥ることはなかったかもしれません。(それじゃお話として成立しないでしょというツッコミはなしで)

 

『ジキル&ハイド』を知らない人がこの曲だけを聞いたら、きっと何か希望に満ちた素敵なことをするのね~~!と勘違いしてしまうのも無理はありません。石丸幹二さんのキラキラした黒目がちな瞳で歌われたら余計そう思っちゃう。

 

ちなみに1992年のオリンピックの公式テーマソングにも選ばれいるし、毎年どこかの学校が必ず合唱コンクールの課題曲にしています。たしかに”長年の努力が報われる瞬間に向かう”という意味では最高に合っている曲ですよね。

でも事の顛末てんまつを知っているミュージカルファンにとってみれば、壮大な失敗フラグにしか聞こえなくなってしまうよ・・・oh・・

 

HARI
こんな超フラグソングがテレビで披露されまくっているのはミュージカルファン的にはちょっと不思議な面白い感覚です

 

 

楽曲の特徴

● 長さは約3分
● 英題は「This is the moment」
● 作曲はフランク・ワイルドホーン
● 作曲当時の年齢はなんと19歳
● 体力と技術が必要な難曲

 

静かに始まりますが曲が進むにつれてラスサビに向けてどんどんと高まっていく構成です。3分ほどの曲なので決して長くはないですが、上り坂の最後にさらに高らかに歌い上げる必要があるので、かなり体力を要する構成になっています。

そして、最初から最後まで間奏がないことも特徴のひとつ。ノンストップで登頂する登山のような曲です!

 

彼の曲はマラソンのように歌う側にもスタミナがないと成立させられません。ワイルドホーンの曲には瞬発力が要求されます。音域の幅も広いので、歌い手は馬力がないと歌いこなせない。それぞれ違った難しさや大変さがあるのですが、やりこなせた時は歌い手としてステップアップ出来たという大きな実感が持てるんです。(石丸幹二)

出典:エンタ☆ステージ

フランクの曲は、エネルギーがないと歌えない。本人からも「僕の歌を歌うなら、肉を食べて」って言われました(笑)。そのくらい、歌いきるにはパワーが必要。陸上で言えば、最後の第4コーナーくらいでバテるくらいのキツさなのですが...そこからさらに加速していかないと歌えない楽曲たちなんです。(石丸幹二)

出典:げきぴあ

 

HARI
簡単にまとめると超難曲ということです!

 

 

最も多くのミュージカル俳優に歌われた楽曲?

『ジキル&ハイド』で主人公を演じた経験のある役者は鹿賀丈史さんと石丸幹二さん。

つまり”持ち歌”として歌唱できる役者はこのお二人のみということです。

 

しかしこの曲、ミュージカル俳優のコンサートで歌唱される機会がものすごく多いです。たぶん最も多くのミュージカル俳優(とくに男性)に歌われてきたミュージカルナンバーじゃないかなと推測しています。

 

石丸さん以外にもとにかく多くのミュージカル俳優がコンサートで歌唱したりCDに収録していたりします。石丸さんがインタビューで仰っているとおり、この曲を歌いきるということは歌い手として一段上に上がったという自信に繋がるのでしょう。

 

ちなみに「This is the moment」としてコンサートでは英語で歌唱する役者さんも多いです。

「ディシズダモメン・・・」と始まると正直ちょっとガックリしちゃう。筆者的にはこの曲は日本語で聴きたい曲なんです。

 

 

まとめ

「時が来た」は『ジキル&ハイド』のみならずミュージカル界全体においても好きな人の多い曲です。

こんなキラキラした歌詞なのに作中で歌われるのはこのタイミングだったんかい!ってツッコミ入れたくなる楽曲ってミュージカルだと結構多いですよね。

 

『ジキル&ハイド』と言えばイコール「時が来た」と連想されがちですが、筆者としてはハイド氏になってから初めて歌われる「生きている」という曲がいちばん好きです。

この曲の魅力についてはまたどこか違う記事で!

 

日本語版のCDは東宝モールにありますが、英語版もオススメです。「事件、事件」の英語版の「Murder! Murder!」の緊迫感は日本語版以上。

 

石丸幹二さん関連の音源の「時が来た」の中ではこのライブverがいちばん好き!100%ジキル博士じゃない石丸さんらしさ溢れる情熱的な歌い方とそれに応えんとばかりの大拍手は感動モノ。

 

 

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