古代エジプトから近代まで、ミュージカルの世界では様々な時代・歴史を舞台に歌とダンスで人々を魅了します。
その中でもやたら作品化されている国と時代。それがフランス革命である!
ミュージカルは元旦から大晦日まで日本中の劇場で毎夜毎夜上演されていますが、毎日必ずどこかの劇場で革命が起こっていると言っても過言ではないほど"革命もの"が多い。その中でも際立って人気があるのがフランス革命なのです。
もくじ
オススメ4選作品紹介
今回はフランス革命を扱ったミュージカルの中でも特に人気がありかつ見応えのある4作品を選びました。
おすすめフランス革命ミュージカル
①『マリー・アントワネット』
②『1789 -バスティーユの恋人たち-』
③『スカーレット・ピンパーネル』
④『レ・ミゼラブル』
ちなみに、時系列でみるとざっくりとこんな感じ。『レ・ミゼラブル』だけ19世紀に入ってからの話なので他作品と比較してちょっと時間が空いています。
①『マリー・アントワネット』
ざっくり評価
ストーリーの面白さ ★★★★☆
楽曲のクオリティ ★★★☆☆
キラキラ度 ★★★★★
荘厳度 ★★★☆☆
笑える度 ★☆☆☆☆
作品の特徴
遠藤周作の小説「王妃マリー・アントワネット」原作のミュージカル作品。
数々の名作ミュージカルを生み出してきた楽曲:シルヴェスター・リーヴァイ脚本:ミヒャエル・クンツェの黄金コンビの作品。王妃であるマリー・アントワネットとパリの貧民であるマルグリッド・アルノー。同じ時代を生きた二人の"MA"が革命の渦に巻き込まれていくストーリー。
主人公であるマリーの名前がタイトル名になっているとおり、マリーアントワネットの人生を軸にストーリーが進み、基本的にマリーアントワネットに焦点が当てられています。
他の3作品はフランス革命+●●という切り口ですが、この作品はあくまでもマリーアントワネットの伝記ものとしての要素が強いので、大河ドラマなど実在する歴史上の人物を扱った作品が好きな人にはオススメです。
とにかくマリーアントワネットが好きだ!マリーアントワネットに興味がある!という人はぜひ観るべし作品。
そして、ヨーロッパで上演された東宝作成のミュージカルは本作品が初の試み。つまり、世界に羽ばたく東宝ミュージカルなのです!
2006年に日本初演を迎え、あまりにも陰鬱すぎる演出で大コケしましたが徐々に上演されている国が増えています。また、2018年にはマリーとフェルゼンの恋愛要素を多くした新演出版として再演されました。
上演の歴史
2006年:日本初演(旧演出版)
2009年:ドイツ
2014年:韓国
2016年:ハンガリー
2018年:日本再演(新演出版)
みどころ
マリー・アントワネットといえばキラキラした豪華な宮殿でお菓子とシャンデリアに囲まれた贅沢三昧の暮らしをしたというイメージがありますが、実際はフランス革命勃発後は簡素な生活を強いられ、最終的には牢獄に収監されギロチンで最期を遂げます。
『マリー・アントワネット』ではチャランポランお気楽王妃であった頃から晩年の囚人番号280番としての姿までを愛人であるフェルゼン伯爵との恋愛模様を軸に展開していきます。
そのため、フェルゼン伯爵との切ない恋愛模様も、重厚な歴史ものとしても楽しめます!肩肘張らずに楽しめる王妃としての豪華絢爛さと、固唾を呑んで見入る革命ものとしてのバランスが見事。
「なんという王妃」「輝ける王妃」など贅沢を極めた天真爛漫でヨーロッパいち輝く王妃アントワネットのナンバーだけでなく、王妃を冷ややかな目で見つめるパリの貧民による力強い革命ソング「もう許さない」などの憎しみのこもった迫力のあるナンバーも見どころです。
こんな人にオススメ
・マリーアントワネットに興味がある
・実在の人物の伝記ものが好き
・フランス革命をひととおり知りたい
②『1789 -バスティーユの恋人たち-』
ざっくり評価
ストーリーの面白さ ★★★☆☆
楽曲のクオリティ ★★★☆☆
キラキラ度 ★★★★★
荘厳度 ★☆☆☆☆
笑える度 ★★☆☆☆
作品の特徴
フランスで生まれた"フレンチ・ロック・ミュージカル"。帝劇ミュージカル=オーケストラというイメージを打破した作品。
楽曲には電子音が散りばめられておりミュージカルの楽曲とは思えないようなポップ調やロック調の曲を楽しむことができる。
ただし、荘厳なオーケストラをバックに朗々と歌い上げるような楽曲はなく、たとえバラードであっても比較的テンポのよい楽曲なのでTHE・帝劇ミュージカルを期待していくとちょっと驚くかも。
父親をペイロール伯爵に銃殺された農民のロナンが復讐を誓いパリへ出向くが、そこで出会った革命家たちの革命理念に意気投合する。そして、王妃マリーアントワネットの子女ルイ=ジョゼフの養育係であるオランプとの恋愛を軸に展開していく。
ちなみに読み方は「いちななはちきゅう」
上演の歴史
2012年:フランス初演。さらに、フランス、スイス、ベルギー各地を回るツアーを開催
2015年:宝塚公演(日本初演)
2016年:東宝
2018年:東宝再演
みどころ
数あるフランス革命ミュージカルの中でも、まさにタイトルどおり恋人たちの目線でフランス革命を描いた作品です。主人公の農民ロナンとオランプ、王妃マリーアントワネットと愛人フェルゼン、革命家デムーランと妻リュシル、など作中ありと様々な恋人たちが登場します。
そのため、歴史的な革命モノというよりはどちらかと言うと少女漫画チックなキラキラフランス革命かなと。登場人物たちの恋の心情に焦点を当てているので、あれ、なんかいつの間にか革命始まってた、となりがち。
ただ逆に言えば予備知識がなくとも十分に楽しめるつくりになっており、かつ嗜好をこらした舞台セットと衣装を観ているだけでも相当楽しめるので、かなりとっつき易い作品だと思います。
また、この作品にもマリーアントワネットが恋人たちの一人として登場するので①の『マリー・アントワネット』同様に貴族と貧民、それぞれ対極の立場の目線からフランス革命を描いています。
しかし『マリー・アントワネット』と異なる点としては、本作はまさにフランス革命の発端となったバスティーユ牢獄襲撃でクライマックスを迎えるので、
フランス革命の全貌というよりはどのようにフランス革命が始まったかという経緯に焦点をあてた作品。
こんな人にオススメ
・少女漫画が好き
・ポップ・ロックミュージックが好き
・小難しい話はちょっと苦手
宝塚版は映像化作品はコチラ
フランスオリジナル版の音源。日本版よりもデジタルっぽさが増していてかなりカッコいいです。視聴もできるのでオススメ
③『スカーレット・ピンパーネル』
ざっくり評価
ストーリーの面白さ ★★★★☆
楽曲のクオリティ ★★★★☆
キラキラ度 ★★★★☆
荘厳度 ★☆☆☆☆
笑える度 ★★★★☆
作品の特徴
原作はバロネス・オルツィの小説『紅はこべ』で、1997年にブロードウェイで初演されました。通称"スカピン"作曲はミュージカル好きにもファンの多いフランク・ワイルドホーン。
『ジキル&ハイド』『デスノート』『マタ・ハリ』など数々の有名ミュージカル作品の作曲を手がけています。
今回紹介する4作品のうち、『スカーレット・ピンパーネル』以外の3作品は史実に沿った歴史モノという印象が強いですが、この作品は冒険活劇・勧進帳悪というテーマ性が強いです。
そのため楽曲も曲中盛り上がりが加速していくような曲調のナンバーが多く、まさにワイルドホーンの真骨頂。
上演の歴史
1997年:ブロードウェイで初演
1998年:ブロードウェイで再演
1999年:ブロードウェイで再々演
2000年:ナショナルツアー
2008年:宝塚初演(月組)
2010年:宝塚再演(星組)
2016年:梅田芸術劇場主催で上演
2017年:宝塚再々演(月組)、梅田芸術劇場主催で再演
みどころ
フランス革命モノにカテゴライズされますが、実は舞台はイギリス。お洒落で愉快なイギリス貴族のパーシーとその妻マルグリッドを中心に進むストーリー。
隣国のフランスでは王政を倒したロベスピエール率いるジャコバン党の革命政府による恐怖政治真っ只中。
「英語の本を所持していた」「外国のお菓子を家に隠していた」なんていうしょうもない理由で罪無き貴族たちが次々と反逆罪でギロチンの餌食となっていた時代。
昨日から、稽古場を引っ越して本番道具を持ち込んで稽古してます。フェンシングブレードを使ったアクションはさらにパワフルに磨きがかかりました!そして、マダム・ギロチンさんもいらっしゃいましたー◎ pic.twitter.com/brMZlxUt2k
— 「スカーレット・ピンパーネル」公式 (@pimpernel_2017) 2017年10月25日
マダム・ギロチンとよばれる断頭台。見ての通りおどろおどろしいリアルなつくり。
そんな恐怖政治吹き荒れるしっちゃかめっちゃかなフランスの様子イギリスから見ていたパーシーは、ただ黙っているだけでよいのか!?我々は罪無き貴族たちを救わなくてよいのか!?と仲間を炊きつけ、"スカーレット・ピンパーネル"という正体不明の秘密結社を結成するのです。
後半シリアスな展開もありますが、基本的にこの秘密結社が活躍する爽快なストーリー。
あえてド派手な仮装をすることで正体がバレることを防いだり、生首の蝋人形を利用して処刑されたフリをしたりと、様々な知恵とギミックを使って敵を出し抜く痛快な作品。
革命モノの作品は例のごとくバッタバッタと登場人物が死を遂げますが、『スカーレット・ピンパーネル』ではメインキャラクターは誰も死にません。そのため後味の悪さも一切なく、肩肘張らずに楽しめる作品に仕上がっています。
①『マリー・アントワネット』、②『1789 -バスティーユの恋人たち-』では貴族・貧民、それぞれの目線からフランス革命を描いていますが、この作品ではどちらかというと貴族目線の話かなと思います。
「炎の中へ(Into the fire)」は特に有名なナンバーで、スカピンといえばこの曲!というイメージの人も多いはず。主人公のパーシーがフランスへの渡航を渋る仲間たちを奮い立たせリーダーとしてまとめあげます。
たとえ危険が立ちはだかろうと我々はその炎の中に突入していくぞ!マサラタウンにさよならバイバイ、という1曲。ちなみに2001年の貿易センタービルのテロのときに消火活動に立ち向かう消防士たちがこの曲を歌ったという逸話があります。
こんな人にオススメ
・爽快な話が好き
・メインキャラクターには死んでほしくない
・フランス革命後の歴史にも興味がある
宝塚版の映像化作品はコチラ。なんとBlu-ray!美麗!
オリジナルブロードウェイ版の音源はコチラ。このバージョンに収録されている「マダム・ギロチン」めっちゃくちゃかっこいいのでぜひ!
④『レ・ミゼラブル』
ざっくり評価
ストーリーの面白さ ★★★★★
楽曲のクオリティ ★★★★★
キラキラ度 ★☆☆☆☆
荘厳度 ★★★★★
笑える度 ★☆☆☆☆
日本初演から32年、最もミュージカルファンに愛されている作品と言っても過言ではないこの作品。
ヴィクトル・ユゴーが1862に発表した小説が原作のミュージカル。日本語訳では「あぁ無情」というタイトルですが直訳すると"哀れな人々"(les miserables)という意味。
その名の通り、メイン登場人物は8割方悲惨な死を遂げる。しかし、作品自体は悲惨さを感じさせないほどのクオリティ。まさにミュージカルの金字塔。
「フランス革命ミュージカル」と称されることが多いこの作品ですが、これまでの3作品とは毛色がだいぶ違います。
これまでの3作品は1789年のバスティーユ牢獄襲撃が物語のターニングポイントになっている18世紀後半の物語ですが『レ・ミゼラブル』は1832年の「六月暴動」を題材とした作品です。
これまでの3作は比較的、貴族vs貧民という構図が多いですがこの作品はそのような対立構造ではなく、王政vs反王政という対立構造が(とくに2幕では)多いです。
要するに、マリーアントワネット時代の王政にやっぱり戻そうよ!という勢力へ抵抗するストーリー。ただし、基本的にはジャン・バルジャンという主人公の人生を追っていくストーリーなので6月暴動関連のシーンは3~4割ほど。
作品の特徴
『レミゼラブル』が他のミュージカル作品とは異なる特徴として日本初演から全キャストをオーディションで選出するというポリシーを貫き通していることだと思います。
ミュージカル常連の役者から完全無名の役者まで同じ土俵で戦った結果、見事選ばれた役者が役を射止めるのです。
そして、アンサンブルとしてデビューした役者がプリンシパルとして返り咲くことが多いことも特徴のひとつ。
プリンシパル・アンサンブル関係なし、評価すべきは肩書きではなく実力のみ。というポリシーは、どんな役者にもチャンスを与えるまさに夢のミュージカル。
もちろん役者だけでなく観客たちも「今年のレミゼからはどんなスターが生まれるんだろう」という楽しみがあるのです。
作品名よりキャストの名前のほうが大きく書かれた「●●出演!!!!(小さく作品名)」という作品が多い中、レミゼラブルだけは「レミゼをやるぞ(出演者は勝手にチェックしてくれ)」という凛とした姿勢がミュージカルファンとしては頼もしく感じます。
さらに、プリンシパル全員がトリプルキャスト以上の人数で構成されているため、少なくとも4、5回は観ないと全キャストをコンプリートすることができない。逆に言えば、何度観てもキャストごとの違いを楽しめるわけです。
例えばファンテーヌ役ひとつとっても、この役者は母性が強いな、この役者は悲劇的な女性という側面が強いな、などなどキャストによって全く別物とまでは言わないものの、異なる印象を持つことは間違いなし。
上演の歴史
1980年:パリで世界初演
1987年:イギリス・アメリカについて世界で4番目に日本で上演
これまで世界40か国以上で上演されています。
みどころ
2012年に映画化されたこともあり、ミュージカルについてよく知らない人でもなんとなく存在は知っているこの作品。よく「レミゼって有名だけど何がそんなに良いの?」と聞かれます。
一言でいうならば、ストーリー、音楽、登場人物の魅力、全てにおいて満点であるから。あまりこの表現は使いたくないですが、みどころは「全部」と自身を持って言える作品であると思います。
レミゼラブルを観てあまり楽しめなかったという人。たぶんミュージカルに向いていないです。
「夢やぶれて」「ワンデイモア」など誰しも一度は耳にしたことのある曲だけでなく全曲名曲と言っても過言ではないほど楽曲のクオリティが高いです。
こんな人にオススメ
・何の作品から観るべきかわからない
・とにかくクオリティの高い作品を観たい
・何度かリピートして観に行きたい
ミュージカルはちょっと敷居が高いなあ、という人はぜひ映画版をオススメ。ミュージカル版に負けず劣らず名作です。
まとめ
フランス革命を扱ったミュージカル4作品を紹介しました。
観てみたい!もう一回観たい!と思った作品がひとつでもあれば幸いです!