最近、各メディアで「闇が広がる」というミュージカルナンバーが披露される機会が増えています。
実はミュージカル界を代表する名曲中の名曲です。
本記事では「闇が広がる」についてはもちろん、『エリザベート』というミュージカル自体についてもサクっとまとめています。
もくじ
ミュージカル『エリザベート』とは
『エリザベート』とは、実在した19世紀のオーストリア皇后の幼少期から晩年までの生涯を物語にした作品です。
音楽・世界観・ドラマ性、その全てが類を見ない程のクオリティであり、公演が行われるたびに熱狂的な作品ファンが増えていっています。
ただでさえチケットが取れないと言われている現代のミュージカル界で、断トツでチケット入手難に陥る作品です。もう、とにかく群を抜いてファンが多い作品。
TwitterなどのSNSのトレンドワードに『エリザベート』関連のワードがランクインすることもしょっちゅうです。そのため、『エリザベート』ってよく見るけどなんなのそれ、という人も多いかと思います。
そして、最近ではテレビで披露される機会がホント増えました。
そのせいか、ミュージカル好きの筆者も身近な人から「エリザベートとか闇が広がるって何なの?なんでそんな人気なの?」とよく聞かれるようになりました。
「闇が広がる」ってこんな曲
「闇が広がる」って、ざっくり言うとこんな感じ。
✦皇太子と彼を誘惑する死神(黄泉の帝王)の攻防!
✦物語の後半で披露される1曲
✦徐々に高まるクライマックスへの盛り上がり!
✦セクシーで艶のある耽美なシーン
✦ミュージカルらしからぬスリリングな音楽性
登場人物は二人。
主人公エリザベートの息子の皇太子ルドルフ、そして彼を誘惑するトート(黄泉の帝王)。
皇帝である父と政治的思想において対立してしまった皇太子ルドルフに対して、立ち上がれよ未来の皇帝陛下殿!と奮い立たせるトート。
しかしこれは単なる激励ではなく、黄泉の帝王、つまり死神のような存在であるトートからの妖しくミステリアスな誘惑でもあります。曲中、皇太子ルドルフはトートにずいずいと押されて、最終的には心を支配されてしまったかのようになります。
つまり、一言で表現するならば、必死にあらがう皇太子ルドルフと彼を誘惑し奮い立たせる黄泉の帝王トートの攻防戦ソングなのです。
ところで「闇が広がる」の”闇”ってなんのこと?という話ですが、これは様々なものに捉えることができます。
ハプスブルク帝国の滅亡という時代背景から”崩壊”ともとれますし、皇太子ルドルフ自身の心の闇という見方もあるでしょう。
ちなみにこの曲はミュージカルファンが集うおけぴというサイトの人気投票で栄えある1位に。つまりは、日本一人気のミュージカル作品の中でもとくに人気のある曲と言うことです。
【参考】『エリザベート』の代表曲
「私だけに」女性ソロ曲
「愛と死の輪舞」男性ソロ曲
「闇が広がる」男性デュオ曲
「闇が広がる」の歌詞
赤字:トート
青字:ルドルフ
太字:二人
長い沈黙の時は終わったのさ
君は思い出す
子供のころのあの約束は
君が求めれば現れる
友達を忘れはしない
僕は今不安で壊れそうだ
側にいてやろう
闇が広がる
人はなにも見えない
誰かが叫ぶ 声を頼りにさまよう
闇が広がる この世の終わりが近い
世界が沈むとき 舵をとらなくては
僕は何も出来ない 縛られて
不幸が始まるのに見ていていいのか?
未来の皇帝陛下
我慢できない
闇が広がる 人は何も知らない
誰かが叫ぶ 革命の歌に踊る
闇が広がる この世の終わりが近い
見過ごすのか 立ち上がれよ
王座に座るんだ
王座!
闇が広がる
今こそ立ち上がるとき
沈む世界を 救うのはお前だ
闇が広がる 皇帝ルドルフは立ち上がる
3つの人気の理由
①ゾクゾクするようなスリル溢れる美しい音楽
まず何といっても音楽性が素晴らしい。これにつきます。
出だしのピアノのメロディを聴いただけで『エリザベート』ファンはもうゾクゾクしてしまう。
ミュージカルといえば一般的に連動するのは明るくハッピーな音楽だと思いますが、この曲はそんな期待とは真逆のナンバー。暗くてスリリングで、でも美しくて儚くて。
最初は「ふ~ん、カッコいい曲だね」くらいにしか思わないかもしれないけど、聞けば聞くほどズブズブはまっていくんですよね。とにかく中毒性の高い曲なのです。
②皇太子×黄泉の帝王の攻防戦
どこか儚い雰囲気のある若く美しい皇太子と、彼を誘惑する死神(黄泉の帝王)。
これ以上にオタク心が擽られる場面設定はない!
ミュージカル作品は男女の恋愛の曲はそりゃたくさんあります。でも同性のデュエットって意外と少ないんですよね。
男性同士のデュエット曲なら、『レ・ミゼラブル』の「対決」のように対立する関係性であったり、または友情ソングであったりがほとんど。
そのような背景を踏まえると、「闇が広がる」のように男性が男性を誘惑するという設定はかなり特殊と言えます。
妖しく美しい黄泉の帝王と皇太子ルドルフの迫力あるハモり合い、声のぶつかり合い。男同士の熱くもクールなせめぎ合いは必見です。
③『エリザベート』の世界観が凝縮された1曲
『エリザベート』の魅力はハプスブルク帝国の滅亡という重厚な物語性とファンタジーともミステリーとも形容できない世界観。
作品を彩る独特の世界観を凝縮した曲が、まさに「闇が広がる」なのです。
初めから終わりまで全曲名曲と言っても過言ではないほど『エリザベート』の楽曲はハイクオリティです。聞き飽きるどころか、聞けば聞くほどその魅力にハマっていきます。
その中でもとくにファンの多い「闇が広がる」は、単純に楽曲として上質であるだけでなく、作品そのものの素晴らしさを象徴するような楽曲でもあるのです。
なぜテレビで披露される機会が多いのか?
1996年の日本初演から人気がある曲ではありますが、ここ数年テレビで披露される機会が急増しています。
しかし、ハッキリ言うと「闇が広がる」はテレビのような大衆メディアで歌われる曲としてはかなり違和感があります。
いくらハイレベルなドラマチックな楽曲とはいえ、歌詞も曲調も暗いしマニアックだし、決して”大衆向け”ではないナンバーです。
それでもなぜテレビでしょっちゅう披露されるのか?というと、筆者としては「テレビ向きのミュージカル俳優の持ち歌だから」だと考えています。
これまで演じた役者(一部)
✦皇太子ルドルフ役
・京本大我
・井上芳雄 など
✦トート(黄泉の帝王)役
・城田優
・石丸幹二
・内野聖陽
・井上芳雄 など
これまで皇太子ルドルフやトートを演じてきた役者は、比較的テレビなど大衆メディアに馴染みのあるメンツです。
そのため、単純にミュージカル界で人気がある楽曲だからという理由だけでなく、ミュージカルに興味がない人に対しても幅広くリーチできる可能性を秘めた曲だから、と考えています。
原版のタイトル
ウィーン発祥のミュージカル作品なので、原版はドイツ語の「Die Schatten warden langer」
直訳すると、”影が長くなる”という意味です。
<参考>
・die Schatten : 影
・werden : ~になる
・langer : 「長い」の比較級
発音的には、ディ シャッテン ヴェーデン レーンガ!みたいな感じ。
日本語は「やみーがーひろーがーるー」という伸ばし伸ばしの発音ですが、原版はかなりメリハリのついた激しい口調です。とくにSchattenが力強くてカッコいいんですよね。
とはいえ、闇が広がるというタイトルはかなり直訳気味です。ド直訳の多いミュージカルソングの中でも、かなりの直訳気味。
でも、このド直訳タイトルも実は人気の1つだと考えています。初見はちょっと「ん?」って思う奇妙なタイトルじゃないですか。エキサイト翻訳感ただよう主語+述語だけだし。
なんとなく愛着が沸くんですよね、このタイトル。
ドストレートの直球とでもいうのか、だんだん自然にスっと胸に落ちてくるんです。
まとめ
今回は「闇が広がる」についてまとめてみました。
これであなたも今日から闇広ツウです!
テレビで披露されたときはドヤ顔で「あ~、闇広ね。いい曲だよね」と言ってカフェを一杯!
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✦作品背景をまとめています
『エリザベート』から学ぶウィーン独特の死生観と"死"との踊り方
ドイツ語版のディ シャッテン ヴェーデン レーンガ!を聴きたい人はぜひ。ドイツ語の響きはやはりカッコいいです。