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帝劇コン@帝劇
『THE MUSICAL CONCERT at IMPERIAL THEATRE』の8/19(水)公演に行ってきました。
Program Bの初回公演の感想です。
もくじ
5か月ぶりの帝劇と観劇
コロナの影響で最後に観劇したのは2020年3月の『サンセット大通り』でした。実に5か月ぶりの観劇となります。
開演した瞬間、涙がボロボロこぼれる…なんてドラマチックな反応はできませんでしたが、久しぶりに劇場に行くとやはり感慨深いものがありました。
本公演はProgram A,B,Cと3パターンあり、田代さん・瀬奈さん・朝夏さんの皆勤賞組を除いてそれぞれ出演者が少し異なります。
本当は3パターン全て観たかったのですが、やはりまだコロナが怖いこともあって1公演に絞ることにしました。
![](https://musicalstyle.net/wp-content/uploads/2020/08/cast-300x167.png)
(引用:公式HP)
キャスト一覧をパっと見た第一印象は、Aはギラギラ芸能人系、Bは安定&スタイリッシュ、Cは重鎮たちの渋め系、という印象。
迷ったのはAまたはBのどちらにするか。もちろんCも捨てがたいけど、出演者の数が少ないので残念ながら検討から外すことに。
迷った結果、ProgramBに決めました。
理由としては劇場も観客もコロナ様式にある程度慣れた段階で行きたかったのもありますし、最も見たいキャストは誰かと考えたときに、やはり中川晃教さんの歌唱を聴きたい!いやむしろ、浴びたい!
感想
スターラッシュ?いいえボスラッシュです!
この手のコンサートには一人くらいは「ん?」と思ってしまうような出演者がいてもおかしくないのですが、今回は全くそんな心配なし!
本当に全員が素晴らしいアーティストであり、パフォーマーであり、エンターテイナーでした。いやー、本当に安定感抜群です。最初から最後まで完璧なエンタメ空間でした。
ゲームをよくやる人なら通じると思うのですが、メインストーリー終了後に各ステージごとのボスに連続で挑めるおまけモードがついているゲームがよくあります。
徐々にレベルが上がっていくのではなくド頭から攻撃力抜群のステージは、まさにスターラッシュならぬボスラッシュ。
Age1:黎明期からレミゼまで
<主な作品>
『モルガンお雪』
『マイ・フェア・レディ』
『サウンド・オブ・ミュージック』
『王様と私』
『キス・ミー・ケイト』
『屋根の上のヴァイオリン弾き』
『ラ・マンチャの男』
『スイート・チャリティ』
『アニー』
『ナイン』
『シカゴ』
『レ・ミゼラブル』
本公演では帝劇の歴史を3つの時代に分けて展開していく構成になっています。
まずは黎明期の作品たち。1951年の帝劇初作品『モルガンお雪』のナンバーから始まります。パンフレットに作品のシーンの画像が掲載されておりますが、すべて白黒写真です。当然筆者はまだ生まれていません。
こうして作品ラインナップを見ると、いまだに上演され続けている作品ばかりですよね。
公演期間が終わっても、キャストを変え演出を変え、新陳代謝を図りながら作品自体は生きながらえていく。そこがミュージカルの最大の魅力だと改めて実感します。
ちなみに筆者はこの作品群の中なら『キス・ミー・ケイト』と『スイート・チャリティ』が好きです。レミゼは言わずもがな、ということで特に言及しません。
『キス・ミー・ケイト』は今回も披露された代表曲である「So in Love」がかなりしっとりとした曲調として有名なので、作品自体もメロドラマのようだと思われがちですが、実はかなりのドタバタコメディ系です。
#帝劇コン Program🅱️絶賛上演中❗️
♪「ソウ・イン・ラブ」(『キス・ミー・ケイト』):#瀬奈じゅん & #藤岡正明
(写真は1966年公演より)
【LIVE映像配信はコチラ】https://t.co/rQEi2Bq6C8 pic.twitter.com/c8dimcpRZs— 東宝演劇部 (@toho_stage) August 19, 2020
ガーンと頭を打たれるような衝撃!目くるめく豪華絢爛な世界観!・・・というテイストとは真逆の作品なので、正直近年のミュージカルファンにストレートに刺さる作品か、と言われるとかなり微妙です。
でもなんかいいんですよね。落ち着くというか、安心して見ていられるというか。
『スイート・チャリティ』に関しては、わりとレア公演?なので見たことない人も多いんじゃないでしょうか。直近では2016年にK-POPグループのKARAのジヨンさん主演で天王洲劇場で上演されています。
この作品、実はかなり筆者好みです。本当に再演してほしい。次回再演時は未視聴の人には絶対見てほしい。
2016年公演は9回くらい観に行きました。ほぼ毎日通っていたように記憶しています。何が素晴らしいって、ダンスナンバーが最高すぎる!!
詳しくは割愛しますが、「それ、主人公の恋愛模様に関係なくない?」っていう本筋に関係ないシーンへの力の入れ方が異常なんですよね。
ハッキリ言うと本筋のドタバタ恋愛劇は正直つまらないです。でもサイケデリックで独創的すぎるダンスがもう本当にカッコいいんだ。
ちなみに次回の再演はボブ・フォッシー生誕100周年にあたる2027年に来るんじゃないかなぁと予測してます。
歌唱に関しては福井晶一さんによる『ラ・マンチャの男』の「見果てぬ夢」が素晴らしかったです。力強く、伸び伸びとした声量に感服。
2019年公演は50周年記念公演でしたが、さすがに松本白鴎さんも御年78歳なのでそろそろ世代交代かなと思います。果たして誰がラ・マンチャを継ぐのか?という話題は、筆者が最も気になっている問題の一つでもあります。
なんとなくですが、福井さんが継ぐ可能性も高いのかなと思わせるようなパフォーマンスでした。作品の雰囲気にマッチしていると思います。
朝夏まなとさんによる『スウィート・チャリティ』の「ビッグ・スペンダー」がセクシーでカッコよかった!コンサート用にかなり端折られていたので、もっとじっくり観たかったなぁ。
#帝劇コン Program🅱️絶賛上演中❗️
♪「カフェ・ソング」(『レ・ミゼラブル』):#海宝直人
(写真は2017年公演より)
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海宝直人さんの『レ・ミゼラブル』より「カフェ・ソング」が本当に素晴らしかった。本公演で一曲だけもう一度聴けるなら、海宝さんのこの曲を選びます。
今思えば2019年のレミゼはマリウス役にちょっと実力差がありすぎた感じがしますね。
Age2:1990年代のブロードウェイ全盛期
<主な作品>
『エニシング・ゴーズ』
『オリバー!』
『ガイズ&ドールズ』
『回転木馬』
『シー・ラブズ・ミー』
『ミス・サイゴン』
『42nd ストリート』
Age2はブロードウェイミュージカルの華々しいナンバー満載です。
とはいえ、この年代の作品に疎いせいで終始「こんな曲あったんだ~」という気持ちで聴いていました。
作品についての知識があればもっと楽しめたんだろうなーと、少し悔しさを感じたパートでもあります。
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♪「42丁目」(『42nd ストリート』):#涼風真世
(写真は年1997公演より)
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涼風真世さんによる『42nd ストリート』の迫力たるやいなや。来月還暦を迎える人間とは思えないほどの声量とキレです。
この年代のミュージカル女優さんの中ではズバ抜けた存在感と実力では?と思います。
『42ndストリート』は2002年以来上演されていないようです。なぜ18年間以上も再演されないのだろう?何か特別な理由があるのでしょうか。
Age2はとにかく涼風祭り。涼風Ageと言っても過言ではないほど。
Age3:2000年以降のウィーンミュージカル台頭
<主な作品>
『ジャージー・ボーイズ』
『ルドルフ ザ・ラストキス』
『ダンスオブヴァンパイア』
『シスターアクト』
『1789』
『ビューティフル』
『モーツァルト!』
『エリザベート』
『マリーアントワネット』
『レディ・ベス』
ラストのAge3は2000年以降のウィーンミュージカルを中心としたナンバー群です。やはりこの年代くらいの作品が思い入れが強いこともあってか、筆者としても最もテンションの上がったパートでした。
この男なくしてウィーンミュージカルを語れない、ミスターウィーンミュージカルこと山口祐一郎さんに出演してほしかったなぁ…とも思ったり。
『ジャージー・ボーイズ』メドレーと『モーツァルト!』から「僕こそ音楽」を担当するのは中川晃教さん。
#帝劇コン Program🅱️絶賛上演中❗️
♪「僕こそ音楽」(『モーツァルト!』):#中川晃教
(写真は2005年公演より)
【LIVE映像配信はコチラ】https://t.co/rQEi2Bq6C8 pic.twitter.com/s8wfva7FFS— 東宝演劇部 (@toho_stage) August 19, 2020
重厚な帝劇をスコーン!と飛び越えるようなハイトーンボイス炸裂です。本当に凄まじい歌い手だと改めて実感しました。「歌がうまい」とか、もはやそういう次元じゃないですよね。
MCで山崎育三郎さんが「ステージ上から見た客電が落ちた帝劇の客席はトンネルのようにどこまでも続いているような錯覚になる」と話していました。
なるほどと思った一方で、中川さんの歌声は暗く長いトンネルを一気に突き抜けて青い空高く舞い上がるような、そんな歌声だと思います。
加藤和樹さんは『1789』から「サ・イラ・モナムール」を披露。
加藤さんの歌唱はこの一曲のみでしたが、そもそも加藤さんがこのメンツの中にいることは改めて考えてみるとかなり凄いことです。日本のミュージカルを代表する役者の一人としてカウントされているのだなぁ…と。
2019年のBrandNewMusicalConcertにてミュージカルコンサートデビューを果たした加藤さんですが、中川晃教・田代万里生・藤岡正明という歌ウマ三銃士に囲まれた強烈な(?)デビューでした。
そしてお次に今回の帝劇コンです。加藤さん、歴戦の猛者に急に放り込まれること多くないですか?
しかし、そんな背景を感じさせないほど堂々としたパフォーマンスでした。スゴい!
MCコーナーでは、花總まりさんが帝劇を「戦場」と表現していたことが印象的でした。
可憐な彼女からそんな言葉が、と一瞬思ってしまいましたが、観客から見えている夢の世界の裏側ではそれこそ苦行と表現してもよいような世界なのでしょうね。
花總さん自身からは、演劇の世界の泥臭い部分はわざわざお客様に見せるものではないという姿勢を感じます。
観客の前では徹底した華々しい可憐さを魅せてくれる彼女ですが、ふとした瞬間に血のにじむ様な努力と歯を食いしばるような忍耐が一瞬チラッと垣間見えるところが、花總さんの大きな魅力の一つなのではないかと思います。
また20年後に開催してほしい
今回のような豪華メンバーでの長期間コンサートは相当レア公演なので、次回同じようなコンサートをやる場合はおそらく10年以上あとになるんじゃないかな…と推測します。
もしそうなら、「Age4:2020年代以降」が追加されたものを20年後に観てみたい、と強く思います。
容姿も実力も備えた若手役者がどんどん台頭しているんだろうなぁ…だとか、
還暦を迎えた井上芳雄さんが日本のミュージカルの人気を底上げしたレジェンドゲストとして登場するのかなぁ…だとか、想像すると結構カオスです。