2020年ミュージカル『エリザベート』のプログラムがついに自宅に届きました。
『エリザベート』プログラム2種本日より受注開始❗️公演プログラムは2020年公演の全キャスト・スタッフを掲載、20周年記念プログラムは歴代キャスト&スタッフのインタビューやメッセージなど盛り沢山の内容📚この機会に是非お求めください‼️#東宝版20周年 #エリザベートhttps://t.co/22SstxIrdd pic.twitter.com/pwv8MS7st2
— 東宝演劇部 (@toho_stage) June 1, 2020
公式サイトによると2種ともにA4・88ページなのでボリュームは同じ。お値段は通常プログラムは2,500円ですが、20周年記念プログラムは2,000円です。
東宝モールという専用公式サイトで購入可能です。8月末までの販売なので早めの購入をオススメします!
注意!
直接的なネタバレや画像はありませんが、当然ながら内容に触れているのでご注意ください。
もくじ
通常プログラム
20周年を飾る2020年プログラムのデザインはなんと黄金!
『エリザベート』は濃紺・黒・グレーといったダークで深みのあるカラーリングがメイン色調となることが多かったので、今回の眩いゴールデンには少し驚きました。
特別な年の、特別な公演であったことがよくわかります。
小池修一郎先生のご挨拶
まず冒頭は本国オーストリアを含むクリエイター陣のご挨拶から始まります。
ウキウキとした浮ついた気持ちで読み始めたこのプログラムですが、小池修一郎さんのご挨拶でハッと現実世界に戻されたような心地になりました。
というのも、小池先生の文章は公演中止が確定したあとに綴られたものであったからです。稽古場で全公演中止を告げられた瞬間のキャストの様子もリアルに描写されています。
そして、現在世界中を包み込むコロナパニックとエリザベートの時代の世界を重ね合わせながら、小池先生の想いが書かれています。
言葉遣いや文章自体は小池先生らしさ溢れる淡白さがありますが、内なる熱い気持ちも伝わってきます。
読んでいると悲しさや悔しさを感じてしまうのはしょうがない。しかしそれと同時に未来への希望を感じるエッセイでもあります。この1ページは間違いなく東宝ミュージカル史に残る名文じゃないかなあ。
美麗衣装を堪能!全身キャストたち
公演中止となった事実を改めてグッ...と噛み締めたあとに読み進めたプログラムですが、その先には思わず「おっ!」と声を出してしまいそうになるような美麗キャストたちの姿が。
プリンシパルキャストたちの紹介ページは、なんと頭のてっぺんから足元まで全身を移すような撮り方に統一されています。
ミュージカルのプログラムのキャスト画像はお顔をメインとした上半身のみであることが非常に多いです。そのため、衣装の足元まで細部を確認しようと思うと上演中に自分の目で見るしかありません。
しかし今回のようなカットであれば、ため息が出るほど美しい芸術的な衣装たちをじっくりと堪能することができます。いやー、これはいい!
ちなみに、真正面から直立した全身が移っているのでちょっと格闘ゲームのキャラ選択画面っぽい。(涼風ゾフィーの強キャラオーラ)
石井美樹子さんによる特別コラム
今回のプログラムで印象に残ったパートは文学博士・石井美樹子さんのコラム。
エリザベート皇后がたゆまぬ努力で手に入れた美貌について語られています。
美貌は武器であり力である、という強いメッセージ。読み進めながら、うんうん全くもってそのとーり!と、何度も頷いてしまった。
しかも皇后は生まれ持った天性の美貌というよりも、たゆまぬ努力で磨き続けた美しさによって彼女自身の願望を叶えながら突き進んでいきますからね。
そのいじらしい努力も、観客を惹きつける要素の一つですよね。
『エリザベート』に限った話ではありませんが、やっぱり美しいものに人は勝てませんよ。
外見より中身だとか、人は見かけじゃないだとか、まぁそれはそれで正しいのは重々理解していますが、美しさ以上に人を一瞬のうちに強烈に引き付ける魔力はこの世に存在しないんじゃないかな。
話は少しずれますが、近年世界中でジェンダーレス化の流れが急速に進んでいます。
「女らしさ」というものから解放されたいと願うことも尊重すべき個人の意思ではありますが、やはり筆者は人類が古来から尊んできた「女性らしい美しさ」に魅力を感じます。
念入りに手入れされた艶やかでふんわりとした長髪、独自の手法によって保たれた真っ白な美肌、コルセットで締め上げられた曲線のあるボディ。
現代社会においては、こういった古典的な女性像はもはや古いのかもしません。しかし、美の象徴ともいえるエリザベートの涙ぐましい努力と美貌を通して、女性にしか表現できないであろう圧倒的な美に触れる体験がなんとも好きなんです。
そんなことをぼんやりと考えてしまいました。このコンテンツを通じて、自分の美に関する姿勢を考えてみるもの面白いかもしれません。
20周年記念プログラム
20周年記念版はハプスブルクを象徴する双頭の鷲がモチーフとなっています。
超豪華&美麗Wikipedia?
一言で表現するならば、この1冊は超豪華・超美麗なWikipediaとでも言うんでしょうか。とにかく凄まじい網羅性です。
いや、もしくは教科書?世界史図録?『エリザベート』がもし受験科目の一つならマストアイテム間違いなし。
これさえあれば東宝エリザベートのことは大体把握できる、そんな1冊です。東宝ミュージカルファンのお宅に1冊あって当然!それほどに貴重で豪華。
これがたったの2,000円なんて安すぎるくらいですよね。少なくとも3,500円はとってもいいような内容だと思います。
歴代全キャストのコメント
東宝『エリザベート』歴代全プリンシパルからのコメントが掲載されています。
10ページにもわたるコーナーなのでお一人お一人の文章自体はそれほど長くはありませんが、全員分の舞台扮装の顔写真付きです。
本題とは少しそれるのですが、20年間で不祥事を起こしたり逮捕された役者が一人もいないというのはなかなか珍しいことですよね…
ここ最近、芸能人の逮捕劇によって過去作品が販売規制されたり顔写真にモザイクがかかるようになることなんてザラです。あまりにも頻発しすぎてもはやあまり驚かなくなりました。
『エリザベート』に限らずミュージカル界だけはプロ意識の高い表現者たちの凛とした世界であり続けてほしいなぁ…とふと思いましたね。
クリエイター陣のコメント
まさに特別プログラムらしさ溢れるコンテンツだ!と心が弾んだのは10ページにもわたるクリエイター陣のコメントとインタビューです。このパートは本当に素晴らしかった。
普通、この手のプログラムではどうしても出演者にスポットライトがあたりがちなので、作品を裏で支えてきた制作陣のインタビューが載るのは貴重だと思います。
そして、芸術に携わるプロの言葉を聞くと、ミュージカルはやはり総合芸術なのだなと改めて再認識しました。
『エリザベート』という作品が持つ独特の浮遊感、ファンタジーと現実の絶妙なバランス、ドラマ性とリアリティ、その全てが一寸の狂いもなく調和しているのは決して偶然の産物ではなく、プロフェッショナルたちが計算に計算を重ねた当然の結果なんだなあ…!
ファンたちが考察に考察を重ねたものに対して制作サイドが「あれには実は特に意味ないんですよ(笑)」だとか「偶然です(笑)」と暴露してしまうことって結構あるじゃないですか。
筆者はこれがあまり好きじゃありません。消費者サイドのわがままなのかもしれませんが、作品を彩る全てのものに意図や想いが込められていてほしい!とどうしても思ってしまう。
『エリザベート』はそんな心配を一切する必要がないほどハイクオリティな作品であることを改めて実感しました。
幻の公演のプログラムを読み終えて
プログラムが自宅に届くまでは、読んでしまったら中止になったことがより一層辛くなってしまうのでは…と考えていました。
実際いまどうだろうか?まったくそんなことはない!むしろ、これほどまでに素晴らしい作品に出会うことができた感動のほうが圧倒的に大きいです。
改めて感じたのは、『エリザベート』って本当に艶のあるセクシーな作品ですよね。
でも、よくよく考えてみると直接的に性を連想させるようなシーンはほとんどありません。(マダム・ヴォルフ以外)
まるでゾフィーが監修しているかのように生真面目なテイストだと思います。それでもなおセクシーさを感じるのはなぜだろう?
人間臭さの中から滲み出るような艶とでも言うのか、激動の時代を懸命に生き抜いた人々だからこそ放つ魅力や色気のようなものなんだろうか?
やっぱり、独特の艶感のある作品だなぁ…と思います。
辛い世の中だからこそ読みたい
作品に携わった多くの方がコメントしているように、死について考えることは生きることについて考えることと同義であるはずです。
別の記事でじっくり書きましたが、日本ではどうしても死について語ることはタブー視されがちです。しかし『エリザベート』は、筆者を含めた日本人の死生観を鮮やかに塗り替えるようなパワーと鮮烈さを秘めた作品だと思います。
ただでさえ辛いコロナ禍の中で暗い作品は見たくない、明るいハッピーな作品だけ見たい、という心持ちになっている人も多いかと思います。
しかし、こんな世の中だからこそ、もう一度この『エリザベート』という作品を通して自分の人生についてじっくり考えてみるのもいいかもしれません。特に20周年記念版は、死生観が熱く語られているのでまるで哲学書のような雰囲気もありますし。
2020年公演が無くなってしまったのは本当に残念ですが、ミュージカル最大の魅力の一つは形を変えながらも作品自体は進化し続けるということだと思っています。
役者を総入れ替えしても、舞台セットや衣装を一新しても、同じ作品として常に生まれ変わり続けます。この輪廻性とでも言うんでしょうか。ミュージカルや舞台特有の奇妙な魅力です!
公演中止を悲しむどころか、『エリザベート』という作品がもつ巨大な魅力の渦に心地よく包まれるような気分になります。まさに、エーヤン!エリザベート!な2冊。