加藤和樹 中川晃教 ハプスブルクの宝剣

【感想】NHK『ハプスブルクの宝剣』第16回~第19回 │新たな旅立ち、新たな野望

 

ユダヤ人としてのアイデンティティを再確立するエリヤーフー

 

NHKオーディオドラマ『ハプスブルクの宝剣』の最終週16回~19回の感想をまとめています。最終話直前までです。

 

こちらの公式HPにて聴き逃し放送も楽しめます。公開期限があるのでお早めに!

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第16回~19回までのあらすじとサマリー

第16回(2020/3/30)「弔いの鐘」

● エディ死亡の知らせを嘆くテレーゼとフランツ
● エディへの熱い胸中を初めて明かすフリードリヒ
● 戦友たちを次から次へと失うエドゥアルト

 

フリードリヒvsエドゥアルトの突撃から始まります。11年という年月を経てついに心と心がぶつかり合う二人。

 

「答えろ!なぜあの時私を裏切った!?」と怒鳴りつけるフリードリヒ。

この後の彼の行動からもわかりますが、やはりフリードリヒはただただエドゥアルトに殺意があるわけではなく、真の友だと思っていたエドゥアルトに裏切られたことから愛憎のような心情を抱いていたんですね。

 

一方、宮廷では戦死した兵士の名簿一覧に目を通すテレーゼ。

リストの中にエドゥアルトの名が刻まれていることに気づきます。テレーゼは戦死した兵士たちの二階級特進と遺族への補償を部下に命じます。ただし、エドゥアルトを除いて。

ユダヤ人であるエドゥアルトに対して功績を認めるわけにはいかない...と。

 

「あなたがユダヤ人でさえなかったら...私は...」と嘆くテレーゼ。

うーん...この期に及んでまだユダヤ人がどーのこーの言っているテレーゼには正直あまり共感できません。

 

ただ、史実のマリア・テレジアもユダヤ人の排除を徹底し、ユダヤ人たちに対して一貫した容赦のない態度をとっていたようです。現代人が想像するいわゆる差別とはレベルの違うものだったんでしょうね。

 

一方エドゥアルトはフリードリヒの加護のもと、なんとか生きながらえました。

生きるか死ぬかの瀬戸際のエドゥアルトに対してフリードリヒが問いかける「わかるかエドゥアルト、君はオーストリアから自由になったのだ」というセリフ、なかなかに痺れますね。

物語の始まりではユダヤから自由になったエドゥアルトが、10年以上の時を経て今度はオーストリアからも自由になってしまう。希望に溢れた言葉に思えて、絶望的なフレーズでもあります。

 

この先、エドゥアルトは一体何者になれるのだろう?

 

そして、ケーフェンヒラー将軍、バチャーニ、カイトの3人が逝ってしまいます。エドゥアルトの味方が次から次へと散っていく...

 

 

第17回(2020/3/31)「炎の中の希望」

● ユダヤ人少女オルガとの出会い
● フランツとの再会
● ユダヤ人国家シオンの建立を決意するエディ

 

フリードリヒから逃げてきたエドゥアルトは、オルガというユダヤ人少女に助けられました。はるかぜちゃんこと春名風花さんが声を担当しています。

この少女オルガがエドゥアルトに投げかける「最悪のときも希望を失ってはいけない」という言葉は、彼の心に深く刻まれることになります。これは物語の世界だけでなく、エンタメ好きの視聴者たちが置かれている状況にも効く言葉です。

 

そして、10年以上前にエディがドイツ語訳した律法は、今やユダヤの女性ですら進んで学んでいるという時代の進化を知るエドゥアルト。

律法が原因で村八分になるところから物語が始まりますが、決して悪いことだけではなかったということがわかると嬉しいですよね。

エドゥアルトが無茶してでも実践してきたことは、必ず実を結んでいるんだなあ...と。

 

どこの国にいても結局馴染むことができないユダヤ人であるエドゥアルトは、トルコ領であるシオン(エルサレム)という土地にユダヤ人だけの故郷をつくることを決意します。

 

後半は、フランツと涙の再会をするエドゥアルト。尺の関係でかなりあっさりでしたが、お互いが感極まった表情をしていることが声と少ないセリフだけで十分に伝わってきます。

エドゥアルトはフランツに対して、トルコ領であるシオンにユダヤ人国家を建立すること協力を仰ぎます。もちろんオッケー!の明るいフランツ。

 

シオン建国を決意してから以降のエドゥアルトは、声質がエリヤーフー時代に戻っているかのように聞こえます。

いや、それよりもずっと前の、パドヴァ大学で学んでいた頃の彼の声かもしれません。羽根が生えたように軽やかで美しく、活動的なイメージを与える響きです。

 

 

第18回(2020/4/1)「真実」

● 神聖ローマ皇帝となったフランツ
● テレーゼvs.アーデルハイト
● ついに明かされるエドゥアルト出生の真実 

 

フランツはついにローマ皇帝へと即位、テレーゼは名実ともに女帝となります。

祝福ムードのオーストリア帝国をよそに、エドゥアルトは生まれ育ったフランクフルトへと旅立ちます。妹同然に育ったドロテーア、父ロートシルトと再会するエドゥアルト。

 

一方宮廷では、フランツはエドゥアルトがユダヤ人であるということを知りながら助け出したという13年前の過去を、テレーゼは知ることになります。

 

そして今作でも一番の盛り上がりではないでしょうか?テレーゼはついにエドゥアルトの元恋人のアーデルハイトと対面することになります。

 

「あなたはドイツ人だというのに、何故ユダヤ人を愛することができたのですか?」と、アーデルハイトに問うテレーゼ。

そんな問いかけに対して、まるで愚問だと言わんばかりにひたすら真っすぐ「何故ユダヤ人を愛することができないのでしょう?」と答えるアーデルハイト。

 

このセリフ、痺れました。作中随一の男前はフランツでもフリードリヒでもなく、アーデルハイトかもしれません。女帝陛下からの問いに対して質問で返すあたり、ほんの少しだけ挑発的にも聞こえましたね。

 

よく言ったぞー!と、意気揚々とした心地も束の間、「エリヤーフー・ロートシルトはユダヤ人ではありません」というアーデルハイトの衝撃の一言で終了。

 

 

第19回(2020/4/2)「ダビデの星」

● 自身の出生を知るエドゥアルト
● ついにテレーゼと決別するエドゥアルト

 

エドゥアルトは、ヘッセルカッセン方伯夫人カロリーネの不義の息子、つまり庶子だったという事実が明かされます。

えぇー!?という驚きよりも、庶子として生まれた天才?それなんてチェーザレ?というツッコミが先行してしまいました。

 

一方、フランツはエドゥアルトに「この世のあらゆる人間に君を認めさせてやる」という激励の言葉と共に、ユダヤの紋章である六芒星をデザインした眼帯をプレゼントします。

 

もう何度書いたかわからない。本当にフランツは愛に溢れた人格者。

あちらこちらに目移りばかりするエドゥアルトとテレーゼに振り回されてばかりいるのに、なんてどっしりと身構えた男らしい人間なんだろう。

 

そして、エドゥアルトはついにテレーゼと最終決戦。

ユダヤ人ではないと知ったテレーゼは、エドゥアルトに大量の功績と地位を与えようとします。

手のひら返しでエドゥアルトを可愛がるテレーゼが不気味過ぎました。こんな狂女、ヒロインポジションに据えていいんだろうか?

 

エドゥアルトはテレーゼに「あなたが本当に愛しているのは、フランツでしょう...?」という言葉を投げかけた直後、『ハプスブルクの宝剣』のメインテーマとも言える例の爽やかなメロディが流れてきます。

そういえば、作中でこのメロディが流れるときには必ずと言っていいほどフランツの存在があります。

そこで気づきました。このメロディはまさにフランツのテーマだったのだと。

 

どこまでも清らかで温かいメロディ。物語の終わりに必ず流れるこのメロディは、まるで何が起きようともエドゥアルトの傍には必ずフランツが傍にいるということを表しているかのようです。

 

「もう会うことはないでしょう」と言い放ち、ついにテレーゼと決別します。

数年前までのエドゥアルトであれば、フランツを裏切ってまたテレーゼと禁断の愛に溺れようとしたでしょうね。エドゥアルトが成長してよかったよかった!

 

 

次回、いよいよ最終回!

次の第20回で『ハプスブルクの宝剣』は終了します。長いようで短かった。

最終回が終わった後に全体総括としての感想もまとめる予定ですが、とりあえずエドゥアルトたちユダヤ人とフランツが幸せになってくれればそれでよい!

 

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