ピピン 観劇レポ

2019年ミュージカル『ピピン』│ 初日公演の率直な感想

2019年6月11日

 

@渋谷東急オーブ

 

ミュージカル『ピピン』@東急シアターオーブ。あいにくの土砂降りでしたが初日公演を観てきました。

先月、ピピンに関してこんな記事を書いています。

2019年6月上演ミュージカル『ピピン』のチケットがあまり売れていない件

 

チケットは正直かなり売れ残っているんですが、個人的にかなり期待していた作品だったので「初日が明ければきっと徐々に売れていくだろう!」と思っていました。

 

予想していた通り!

終演後、リピーターチケット列が大変なことになっていました。

 

ただ正直なところ、自分はリピートはしないかな・・・ネガキャンしたいわけじゃないんだけど、良いところも悪いところも率直に感想を書いていきます。

 

ミュージカル×サーカス×マジック

ピピンってどんな作品?と聞かれたら「ミュージカル!サーカス!マジック!」と答えるます。

サーカス要素もあるミュージカルとして宣伝されがちですが、実際はサーカス色がかなり濃かったです。一部マジックもあります。

 

ストーリー自体は若い王子が人生の意味を見つける旅なので、わりとありがちな印象です。しかし、物語の進行と共にオシャレなダンスと派手で華麗な技の数々が間髪なく披露されるので見飽きる心配は一切ありません。

ミュージカルというよりも、なんでもありのエンターテインメントショー!という楽しみ方ができます。

 

と、思いきや度肝を抜くラスト10分間

作品の印象から「まあなんやかんやあって、ハッピー大円団なんだろうな!」と予想していたのですが、良い意味で大きく裏切られました。いや、本当に驚き。

 

正直、城田優とクリスタルケイ率いるハッピー&クールなサーカス団のお話っぽさあるじゃないですか。ハッピーエンド確約のエンターテイメントショー!みたいな。

そう思っていたので、ラストの10分ほどの展開は本当に驚いた。詳しく書いてしまうとネタバレになるので書かないけども本当に驚愕の展開です。

 

最後、背筋が少しヒヤっとした。「あぁ、こういうことだったのか」と全て納得してしまう。ラストはそれまでの2時間とは全く違う雰囲気になるので賛否両論かもしれません。でも筆者としては、このラストシーンこそがこの作品の真骨頂なんじゃないかなと思います。

自分はこのエンディングかなり好きです。観てよかったと素直に思った。

 

完璧すぎるキャスティング

 

ピピン王子役の城田優さんと、リーディングプレイヤー役のクリスタル・ケイさん。このお二人、完璧にハマってた。いや、というか全キャストぴったりだった!

ピピン役の城田さん、めちゃくちゃ"ピピン"っぽかった。ピピンというキャラクターに対して先入観や知識のない自分が「あぁ、めっちゃピピンじゃん」って思ってしまった。意味わからないと思うんだけど、そうとしか言えない!

 

城田さんって黄泉の帝王だのギャングだの、一般人とかけ離れた役どころを演じることが多いけど、こういう普通の青年っぽい役もすごい似合うじゃんと思ったよ。

ルックスもオーラもどう見たって普通じゃないのに、こう、なんていうか”どこにでもいる迷える青年”って感じの青々しい雰囲気も出せるのがすごいね!

 

 

そしてクリスタル・ケイさんも素晴らしい!ミュージカルデビューとは思えない。

正直あのヒット曲の人って印象しかなかったけど、唯一無二の存在感があります。リーディングプレイヤー役をできる人って彼女以外、今のミュージカル界にいないんじゃないかな?ってくらい。

 

他のキャスト陣も完璧にハマってましたが、これは惜しい作品だなとも同時にお思います。惜しいって言うのはクオリティがいまいちということではなく、日本人受けはあまり良くない作品かも?という印象を持ちました。

 

日本人受けが難しい世界観?

 

ポスターのビジュアルからも伝わるとおり、全体的に童話っぽい印象が強かったかな。

 

海外でよく出版されている児童書と大人の小説の中間くらいのジャンルの小説って人気じゃないですか。正式名称わからないんですが。ハイファンタジーっていうんですかね。

『ナルニア国物語』とか『デルトラクエスト』とか。ピピンはこの手のジャンルの要素が強いと思う。正史の歴史物とは違う、ファンシーでビビッドな世界観というか。

 

作品としての良し悪しは別として、単純にこの手の世界観のミュージカルってあんまり日本のミュージカルファン受けしないんじゃないだろうかと思います。

重厚で荘厳な世界観と音楽を土台として、ほんの少し少女漫画チックな爽やかさがある作品が日本で人気のあるミュージカルの王道であると思います。特に日比谷界隈では。

 

なので、こう「ズシっとくる」心地よい重さみたいなのが薄くて、ちょっと物足りない感じがしてしまいました。良く考えると結構シニカルだなあと感心するような演出や構成は随所にあるんですが、やはりどこか子供向けっぽい雰囲気は拭いきれなかった。

 

いやそもそも、内容うんぬんの前にめちゃくちゃ重要な問題があるのです。それが、チケットが高すぎるということ。

 

チケット高すぎ問題

作品の内容自体には関係ないんだけど、チケットの価格がP席 15,000円、S席 13,000円、A席 11,000円、B席 9,000円。

過去に日本での上演歴がある作品とはいえ作品知名度は正直そこまで高くありません。つまり、P席とS席を狙う層は出演キャストのファンか作品ファンのどちらかが大半であると予測します。

つまり、この価格に見合う満足感を得られる確証がある人たち。(問答無用で一番高価な席を狙う金銭的に余裕のある人もいるかもしれないけど)

 

それ以外のほとんどの人たちは「ピピンってどんな作品なんだろう?試しに観にいってみようかな」という層だと思うんです。

そうなってくると、これはさすがにA席とB席が高すぎる。大体の相場はA席9,000円、B席4,000円とかなので。

 

ピピンに対して興味はあるのに「え~B席でも9,000円。やっぱやーめた!」ってなっちゃう離脱勢がめっちゃくちゃ多いと思うんです。これはもったいない!

 

とはいえ、本国スタッフによる演出なんてコストが相当かかっているだろうし、ここまで高い理由はちゃんとあるんでしょう。

自分自身はチケット代に対して全く後悔のない作品でした。しかし、この価格帯は正直「適正価格」とまでは言えないと思う。いや冷静に考えて3階のB席9,000円はやっぱり高いわ・・・

 

色々書いてしまったけれども

いや、良い作品だと思うんです!ただ、ミュージカルとして良作かと問われると難しい。

まさにミュージカルとも、サーカスとも、マジックショーとも、どのジャンルにも形容できない”ピピン”というジャンルの作品なんだと思います。それが良い悪いは別として。

 

自分はこのオリジナリティに「わぁ~!なんだこの世界観!」と楽しめましたが、単純にミュージカル作品として期待していくと「う~んもうちょっとなぁ」とガックリしてしまうかもしれない。

 

「いかなるジャンルにもカテゴライズできない」という特徴は、ら観客によっては「全てにおいて中途半端」という感想になってしまうかもしれない。

でも、迷っている人がいるなら是非観て欲しいかな!観て損はないと言い切れます。

 

主演俳優は大変な仕事だ

あと、これは完全に余計なお世話ですが・・・

ただでさえ皆エリザベートに血眼になっている時期と同時期に上演する作品の主演ってだけでもかなりキツいのに、城田さんが前回エリザベートに出演していたという事実、結構残酷だと思う。

 

自分が前回公演まで出演していたチケット争奪戦になる大人気ミュージカルが上演されている一方、自分の主演作品はチケットが結構余っている状況。

もちろん城田さんが悪いわけじゃないし、むしろピピン役として完璧にハマっていたと思う。でもこの状況は正直役者としてはかなり辛いんじゃないかな、と勝手に心配している。

 

 

ちなみに城田優さんのソロアルバムに『ピピン』の「コーナー・オブ・ザ・スカイ」が収録されています。どんな曲だったっけ?という人も視聴できるのでオススメ

 



 

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