舞台やミュージカルに観劇に行くと、劇場でアンケートを配られることがあります。
筆者が観劇超初心者だった頃「これ書いて意味あるの?」と疑問に思っていました。
結論から言うと、超意味あるんです!!
今回は、劇場スタッフから説明もなくパッと手渡されるアンケートの正体に迫ります。
この記事を読んでわかること!
・アンケートは必ず書かないとダメ?
・アンケートは回収後、誰が読むの?
・何を書くべき?書かないべき?
・どんな内容が効果的?
・書いたあとはどこに提出すればいいの?
もくじ
実際のアンケートの見本
実際に配られたアンケートです。
(書いて提出しようとしたのですが、忘れて家に持って帰ってきてしまいました・・・)
これはミュージカルのコンサートのアンケートですが、基本的に劇場で配られるアンケートの質問内容はどの公演もほぼ同じです。
年齢や性別などの属性情報、どのようにこの公演の存在を知ったか、どこが良かったor悪かったか、などです。
アンケートは必ず書かないといけない?
もちろん任意です。むしろちゃんと書いてる人のほうが少ないんじゃないかな。
ちなみに、おけぴネットさんによる投票では以下のようになりました。
①いつも書いている :93票 (20%)
②たまに書く :196票(44%)
③めったに書かない :163票(36%)
おけぴネットから引用
小劇場で行われるような小さな劇団の公演の場合は、狭い出口で役者やスタッフが「ぜひアンケートを!」というオーラ満点で立っているので書かないでササッと帰るのはちょっと気まずいこともある。
書いたアンケートは誰に読まれるの?
役者さんが読んでくれるのかな?と期待している観客もいるかもしれませんが、大規模な商業公演であれば基本的に役者含む出演者は読まないです。
アンケートなんて興味ないから読まないぜ!ということではなく、単純に役者の手に渡らないだけです。
もちろん、公演によっては役者がしっかりと読むこともあります。実際に「あの公演は毎日終演後にアンケートを熟読していました」とお話ししていた役者さんもいました。
※ただし、小劇場ではスタッフや役者など誰でも手に届く場所にまとめて置いておかれることもあるそうです。空間が狭いからこそなせることですね。
公演の規模、主催者の考え方によって異なると思います。小劇場(主に劇団)公演ですと、関係者・キャスト全員が見られる場所に置かれていたりもしますが、商業的な舞台だと俳優さん本人が読むのはレアかもしれません#マシュマロを投げ合おうhttps://t.co/75oENzciVh
— 上村由紀子/ライター(演劇・ドラマ・ミュージカル) (@makigami_p) August 14, 2019
で、結局メインで読むのは誰なの?
というと、主催側です。
商業演目として企画・立案・主催している制作サイドのことです。東宝、ホリプロ、キューブ、梅芸、などの企業が該当します。
つまり、アンケートは役者さんが「お客さんは楽しんでくれたかな?」と感想を読むものではなく、主催側が「顧客(=観客)は何を要望しているのだろう?」ということを探るために読むわけです。
ようは、主催側が顧客(=観客)にさらにお金を落としてもらうためにはどうすればよいか?という戦略の参考にするということです。
高いチケット代と3時間弱の時間を使って公演を観た観客のリアルタイムの生の声ですからね。ヒントにならないわけがない!
金儲けのために書かせるなんてヒドイ!と感じる人もいるかもしれませんが、実はwin-winです。
観客は主催に意見や要望を伝えられる
↓
主催は観客が望む方向性を理解できる
↓
観客はより劇場に足を運ぶ
↓
主催はさらに収益を得ることができる
まとめると、アンケートは観客と主催側、つまり顧客と企業のコミュニケーションツールなのです。
本題:アンケートには何を書くべき?
ここまでアンケートという存在の位置づけについて説明しました。
それでは本題です。具体的にどのようなことを書くべきなのか。
アンケートに書くべし!
■書くと効果的な例
・再演希望
・商品化希望(DVD・CDなど)
・良かった役者と理由
・良かった演出やシーン
やはりプラスの内容です(褒める内容のこと!)
最も効果のある内容は再演希望や商品化希望です。
役者さんがカーテンコールでよく言いますよね
アハハオホホ・・・と観客席からは笑いが起きますが、これはマジなんです。切実な願いです。
主催も営利団体なので、やはり収益を見込めない再演には踏み切れません。そのため、これだけの要望、つまり見込み収益があるんですということを具体的な”数値”で示さないといけない。
その数値の元ネタになるのはアンケートの数です。
いくらTwitterなどのSNSで再演希望と書いても、主催側が検討するために必要な数値にはカウントされません。アンケートの量こそ、絶対的な証拠なのです。
良かった!とアンケートに書いた役者への評価にも影響します。
主催の立場になってみれば、当然良い評価の多い役者をまた起用したいはず。
まとめると、観客としての自分の要望や希望を実現させるためには主催側にとっていかに収益が見込めるかというポイントを考えながら書くと、より効果的なアンケートになります!
繰り返しになりますが「役者さんの起用希望」「再演希望」「商品化希望」は絶対にアンケートに書いたほうがいいです。1mmでも思ったら書いてください。
ミュージカルや舞台はアンケートの内容が実現する可能性が格段に高いエンタメだと思っています。
せっかく書いたアンケートですから、「ふーん良かったね」とスルーされない文章を書きたいよね!
ただの純粋な感想だって書きたい!
とはいえ、「そんな戦略めいた感想じゃなくて純粋に感じたことを書きたい」という方もいると思います。
もちろんOKですよ!ただ、せっかく時間と労力を割いて書くわけですから、純粋に思ったことであっても出来るだけ具体的な感想のほうがベターです。
例えば、自分が職場でプレゼンしたり自宅で料理をつくるとき。
ただ「よかった」「美味しかった」と言われるよりも「とても理解しやすい内容でよかった」「彩りも綺麗だし味付けが好みで美味しかった」と具体的な感想のほうが嬉しいし、参考になりますよね。
観劇ライフが長い人は、このことをよ~くわかっているので役者さんからもこんなツイートがあるのです。
公演にはアンケートがついている。
それを読んでいて思った。
『具体的な要望や意見、感想が多い。』
新百合ヶ丘に10年この劇場があって、そこで舞台芸術が止めどなく作られてきたという事実を、それに親しむ人々を育ててきたという結果から感じた。
これこそ劇場のある意味なんだよね。 pic.twitter.com/DQhaqeL0Io— 神田恭兵 (@KyouheiKanda) October 16, 2017
せっかく書くなら抽象的な感想より具体的な内容のほうがよいことは間違いないです。
悪かった点も書いてよい
そんな良いことばかりじゃなくて悪かった・良くなかったことも書きたい時もあると思います。アンケートですから、もちろん書いていいはずです。
ただ、ひとつポイントがあります。
「つまらなかった、もう観に行かない」と思った観客はわざわざアンケートなんて書かないで、ただ黙って去るのみ。
悪かった点をアンケートに書こうと思った観客は、良い作品だと思うからこそ改善してほしいはずです。
そのため、どうせならアンケートに書いた悪かった点が改善されるに越したことないです。
しかし、以下のようなことは書いてもあまり意味がないです。「そうなんだ、残念だったね・・」で終わってしまうことが多い。
書いても意味がない例
■個人の愚痴
・隣の席のマナーが悪くて楽しめなかった!
・席が後ろのほうで見づらかった!
■個人の事情
・劇場から家が遠くて行きづらい!
・チケットが高くてなかなか行けない!
このような「そんなこと主催に言われても改善しようがないよ・・・」という個人の愚痴をぶつけてもしょうがない。どうしても発散したいなら家に帰ってチラシの裏にでも書こう。
では、どういう内容であれば改善されるのかというと、”こう変えればもっと良い作品になる”という観点で書かれたアンケート。
例えばこんな感じ。
「どこどこのシーンでの音響のバランスが悪くて、主役のセリフが全然聞き取れません・・・」
「ほにゃららのシーンへの展開が急すぎて、話についていくのが大変でした・・・」
「あそこのセリフ、もしや翻訳ミスでは・・・?」
もちろん全ての改善がアンケート起因というわけではないはずですが、改善の声が多かった演出やシーンは再演時に修正されることが結構あるんです。
「あそこやっぱり変わったね」と再演時に作品ファンの間で話題になることがあります。まぁ、思い込みかもしれないけど・・・
書いたアンケートの提出方法
会場によりけりですが、アンケートBOXを設置している劇場もあれば、出口でスタッフが手で回収している劇場もあります。
もし、どこにor誰に渡せばいいのかわからなかったらスタッフさんに聞くべし。そのまま回収してくれることもあるし、「あちらにアンケートBOXがあります」と案内してくれます。
書こうか書かないか迷ったら書こう!
「伝えたいことはたくさんあるけど・・・」
「業界人でもないド素人観客の意見なんて誰も耳を傾けないだろうし・・・」
「上手い文章できれいにまとめられないし・・・」
なんて思ってるなら書こう!別に綺麗にまとめる必要なんてないんです。
礼儀知らず無礼者と言われても訳もなく叫びたくなるその気持ちをそのまま書けばよい!
観客=お金を落としてくれる人のほとんどは演劇ド素人。ド素人から収益を得るのだから、むしろド素人の意見のほうが重要であるはずなのです。