帝劇ミュージカルにおける座席の種類と価格をもう少しだけ細分化してほしい!
と思っている筆者が、実際に実現した場合にどうなるのか?ということを考えてみた記事です。まずは現状の座席別価格のおさらいから。
もくじ
座席の種類と価格についての現状
多くのミュージカルは座席の種類よってチケットの価格が違います。公演にもよりますが、帝劇作品の場合はS席・A席・B席の3種類に分けられることが多いです。宝塚はSS席、劇団四季はC席なんて種類もありますね。
ミュージカルのチケットを初めて取ったときに少し驚いたことを今でも覚えています。
というのも、S席が全席の半分以上を占めているから。
観劇ビギナーだった当時の筆者の感覚では、ランクが上がれば上がるほど希少価値が高くなるイメージでした。しかし実際のところはS席が半分以上、A席がちょこっと、B席が断トツで少ない、という割合になっていることが多いのです。
飛行機で例えると半数以上が最上級席であるファーストクラスであるということ。
えー!?S席って選ばれし者のプレミア特権席じゃないの?という当時の驚きはさておき、この割合のいちばんの問題はS席が半数以上を占めていることそのものではありません。
むしろ、同じS席でも同じ価格として扱われるべきではないほど差があるということのほうがよっぽど引っかかってしまう。
まさにS席!最高に見やすく迫力がある!という席と、これホントにS席の価格の価値ある・・・?と思ってしまう席が混在しているということです。
同じS席であっても、前方中央列の★と後列端っこの★では、見える景色や迫力には大きな差があります。この2つの席を同じ価格で販売されているのはさすがにちょっと疑問がある。
この不満感を解消するためには、例えばこんな感じの配分にすれば多少は是正されるはず。
筆者が常々感じている疑問をまとめると、
ポイント
● 最上級席であるS席の割合が多すぎる
● もう少し席の価値に見合った価格の細分化をしてほしい
同じS席でも位置によって価値に大きな差がある!という声は観劇ファンの間でも昔から言われていたことです。
そんなこともあってか(?)、イープラスでは座席選択プラスという制度がつくられ、ミュージカルのチケットににおいてもこの座席選択プラスが適応される公演があります。
賛否両論のチャージ料金制
座席選択プラスとは
2015年に帝国劇場で上演されたとある公演で、イープラスの座席選択プラスという販売方法が適応されました。
座席選択プラスとは
● 通常のチケット料金に加えてチャージ料を支払うことで、そのチャージ料の金額に応じて良席を確保できる
● イープラスの貸切公演のみ適応された
● チャージ料の収益は主催ではなくイープラスに入った(おそらく)
身もふたもない表現をすると銭さえ積めば良い席で観れる制度ということです。
このように全座席をエリアごとに分け、例えば最もステージから近い赤の①のエリアは、通常のS席料金+2,500円をチャージ料を支払うという制度でした。チャージ料のない座席は⑦のエリアのみ。
観客のニーズを具体化した”座席の細分化推進”という切り口では面白い試みであると思いましたが、一方で批判の声も数多く寄せられました。
批判① ほぼ全席がチャージ料金対象
8割近くの席にチャージ料金が適応されましたが、残りの2割の席は通常料金のままでした。ほぼ全てをチャージ料金席にするならば、逆に値下げ席があってもよかったと思います。
それだけでなく、各エリアを比較した際の値段設定がかなりいい加減だったことも批判の対象に。
批判② 収益を得たのは主催ではない
主催に利益が入るなら少なくとも筆者はミュージカルのファンとして何も違和感はありません。むしろその収益を使って衣装や舞台セットにさらに投資してくれたら嬉しい限りですよね。
しかし、チャージ料分を手数料として儲けたのはミュージカルの主催企業ではなくチケット仲介業者であるイープラスであったため、主催に収益が入るわけではないのです。
そのため、ミュージカルファンがいくら投資しても作品のリッチさ・ゴージャスさには一切関係なし、という虚しさいっぱいの状態に。
この座席選択プラスは結果的には批判や失敗の声のほうが多かったような気がしますが、観客や時代のニーズに合わせて新たな試みを打ち続けていくことそのものは辞めないでほしいかなあ。
理想の細分化はコレだ!
いち観劇ファンには見えてこないような様々な大人の事情があることは重々理解しているつもりですが、それでもやはり現状の価格設定には少し不満があります。ぜひ座席と価格の細分化を進めて欲しい!と日々考えています。
まずコレ↓がBEFOREです。
細分化によって実現して欲しい!と願うことはこの3つ。
【①】多少高額でもいいから最上級の席で観たいのだ!というヘビー層向けの良席確約の高価格帯の席を設ける。
【②】ミュージカルの門戸を広く構えるためにライト層向けのお手頃価格帯の席を増やす。
【③】①②どちらか一方だけでなく、実現するならば同時に実施する。
これを踏まえたAFTERがこちら。
20,000円でも完売するような座席を13,000円で売る必要はない!逆に言えば20,000円ほどの価値のある席なら、20,000円で売ってしまえばよい!
ただでさえミュージカルの人気は近年まれに見るほど高まっているのだから、供給よりも需要のほうが圧倒的に高いのです。その流れの中で「価格=座席の価値」となるためには料金の一部値上げは批判されるものでもなんでもなく、自然な流れだと思います。
欲しい人が増えたら値段も上がる。これ、商売では基本中の基本です。ミュージカル人気に乗っかったぼったくりだ!なんて一切思いません。
しかしこれだけでは単なる値上げになってしまいます。そうならないように、ライト層向けのお手頃価格席の割合も増やしてほしい。
観劇は娯楽といえど、やはり学生さんたちにとっては1万オーバーは大きな負担になってしまう。それだけでなく、最近ミュージカルに興味を持って観劇してみたいけど高すぎる・・・という人向けの門戸は広げておきたい。
そのため、SS席を設けるならA席・B席の割合増加は同時に行われなければならないと考えています。ミュージカルファンの健気な学生さんたちの分のお金は我々大人が負担してやるよ!ということ。
想定される批判
もしこの分配が実現したら、当然批判の声も想定されます。
【批判予想①】金持ちの娯楽
「お金持ちしか最上級のSS席に座れないじゃないですか。お金のない人はSS席で観る権利はないっていうんですか。」
その通りです!YES!YES!YES!
観劇なんてどこまでいっても結局は娯楽なんです。生物として生きていく上で不可欠なものでもなんでもない。どうしてもSS席で観たいなら、まずは生活を安定させることのほうがよっぽど大事。
前述したとおり、20,000円でも完売するチケットをわざわざ13,000円で売る必要はない。超人気公演なら、例えばセンターブロック10列以内確約のSS席なら1枚3万円でも即完売するんじゃないかなあ。
そもそもS席でも十分すぎるほど観劇を楽しめます。しかし実際問題「金に糸目は付けないから最高級の席で観たいのよ!」と需要があるのだから、高額転売されるくらいなら公式的にプレミア席を設けてくれたほうがずっと良い。
しかし重要なことは、前述したとおり良席確約のプレミアSS席を設ける場合は必ずライト層向けのお手頃価格席の割合もきちんと増やすこと。そうしないとただの値段のつり上げになってしまって、門戸を狭めてしまうので・・・
自分がSS席に座れなくたって、その利益分が衣装代やセット代の豪華さに繋がるのであれば、観劇ファンとしてはもう大満足ですよ。飛行機だって馬鹿高いファーストクラスを買う顧客がいるからこそ、安全で快適なフライトを一般席でも享受できるのと同じ。
【批判予想②】その場にいることだけでも幸せ論
座席の価格帯をもう少し細分化してほしいという話を、よくアーティストのライブに行く知人に話すとこんな答えが。
「アリーナのコンサートなんてほとんどは最前列でも最後列でも一律価格だよ?でもいいんだ~、その場に居られることだけでも幸せだから」
えええ~!?
筆者には毛頭思いつかない発想でした。その場で感動を共有できる幸せ・・・?そもそも最前列と最後列ならその感動の度合いも違うんじゃない?じゃあ感想の度合い分の価格差を設けるべきでは?
と思ってしまいましたが、本来は私の知人のような心構えで参加したほうがよっぽど楽しいのかもしれませんね。
ファンのメンタリティとして「座種は問わず、その場に居れるだけ数万の価値がある」という心構えで応援する気持ちはよーくわかります。
「●●だけでも幸せ」という考え方自体は何も責められるものではありません。むしろ謙虚で素晴らしい精神だと思います。しかし、対価を支払う現実の販売という面ではもう少しシビアなチケット価格=座席の価値が求められて当然と思います。
本当に「適性価格=顧客満足?」
ぶっちゃけた話、現在のチケット価格は適正価格であると思っています。
しかし、適正価格=顧客満足に直結しているかと言われると、また話が変わってきます。
帝劇でいつも夢のような素晴らしい世界を楽しませてくれることには本当に感謝しているし、これからも主催さんにはお金をドシドシ落としたい。観劇ファンには決して見えてこない大人の事情があることも理解しています。
それでもやはり、最上級席であるS席が半数以上を占めている現状の座席分配と価格には、さすがにギャップがあるのではないでしょうか。